一冊の本が世界を変革することがある。小さな出版革命はやがて大地に広がっていく。

一冊の本が世界を変革することがある。小さな出版革命はやがて大地に広がっていく。
「誰でも本が作れる、誰でも本が発行できる、誰でも出版社が作れる」この小さな革命を生起させんとする「草の葉ライブラリー」が放つ第三弾。時代に沈みかけた下町をよみがえらせた山崎範子の「谷根千ワンダーランド」と高尾五郎「クリスマスの贈り物」の登場。

風に「クィーンクイーン、……グィィーン、ガシャガシヤ」となるのだ。
生き物の飼い方

「犬猫等の家畜の飼育」禁止の賃貸マンションに住んでいる。古くて狭いが、「子ども可」の物件が他に少ないためか、近所にもジャリジャリ子どもがいる。わが家にはイモリ、ハムスター、金魚、メダカ、鈴虫がいるが、これくらいのものだと何もいわれない。それとベランダを勝手に寝床にしている不法侵入猫が三匹。

以前にも種類の違うハムスターがいた。子どもが同級生に二匹もらって、押入れに隠してたが、ガサゴソの音で発覚。飼うことにした。近所の子どもたちが、ハムスターと遊びに毎日どっとやってきた。よく食べ、よく眠り、よく動き、かわいかったけど、ある日、転んだ子どもの下敷になって内臓破裂。目玉が飛びだし、見ている間に死んだ。
子どもたちはシーンとして、泣き出すのもいる。しかたないので、飛び出た目玉を押し込めて、近くの公園に埋めた。子どもたちは「さらば友よ」を合唱した。

内臓破裂でハムスターが死んだ晩、残ったもう一匹は相棒を探して、一晩中巣の中をカサカサ歩きまわった。翌日からは巣の一隅に踞り、絶食をはじめた。好物のキャベツもヒマワリの種もカステラでさえも食べなかった。絶食をはじめて一週間くらい経った頃、動かないハムスターに触れると死んでいた。同じ公園の隣の場所に埋め、また「さらば友よ」をみんなで歌った。
「ハーちゃん(餓死した方)は、ムーちゃん(事故死の方)がとっても好きだったんだね」
「うん、死ぬほど好きだったんだ」
「さみしかったんだよ、ほかに仲間がいないから」
「話し相手がいないもんね」
「あたしたち遊んであげたのにね」
「でも、ハムスターじゃないものね」
子どもたちは、このハムスターの死にしばらく感動していた。
同じ頃、うずらを二羽飼うことになった。おまつりのクジに当たって、鳥カゴとエサ付きでもらってきたのだ。数カ月すると毎日卵を一個づつ産むようになったので、五日分溜めては食べた。飼いはじめて一年半くらいした頃、一羽が猫に連れ去られた。うずらの首を銜えてゆく猫の姿が窓の外に見えたが、追いかける気になれなかった。
残ったうずらがキキキキイとうるさく鳴く。あんまりうるさいので家の中に入れるが、それでもキキキキイと鳴き続ける。大家から苦情の電話がくる。鳥屋に持っていこうと話した朝、うずらがいなくなった。その朝、エサをやったのは誰か? エサの扉をわざと開けたままにしたのか? 追究する気もないまま、うずら事件は終った。

メダカが一挙に孵化したことがある。小さな黒点のついた透明なのがウヨウヨ泳ぐ。毎日毎日体が大きくなる。水草さえ入れておけば、エサを忘れても元気に育つ。だいぶ大きくなった頃、池で捕ったクチボソの小さいのをメダカの水槽に入れた。翌朝、メダカは水に浮き、クチボソ三匹が悠悠と泳ぎながら死体をツンツンとつついている。
結局、別にしてあった親メダカ四匹を残して、その年孵化したのは全滅した。
子どもたちはさっそくクチボソを池に追い返し、「メダカー同の墓」と割りぱしに書いた。メダカには「さらば友よ」は歌わない。
山崎範子の奥に見えてくるもの

「谷根千に終刊の日が」を草したのが、二〇〇九年であるから、それから十二年の月日が流れ去ったが、いまだに山崎範子の本は世にあらわれてこない。そこで草の葉ライブラリーでの登場である。彼女が「草の葉」に投じたエッセイ、そして地域雑誌「谷根千」に書き込んだコラムやルポを拾い集めて、時系列ではなくラン