立山の片隅にほとんど知られていない小さな牧場があります。牧場の名は白雪牧場。原っぱに貨物コンテナがぽつんと置かれ、そのまわりで二頭の親子ポニーが草を食べながらのんびり一日を過ごしています。この牧場はどこから生まれ、これからどこへ向かうのか。よろしければご一読ください。
はじめまして。白雪農園の坂口創作です。
私たちは、五年前に、東京から富山の立山に移住し、現在では家族5人とポニー2頭で有機農業を営んでいます。また、農業を土台にしながら、ゲストハウス、農業体験、農産品加工、炭焼、立山巡礼、農家再生、地域の事業再生と、季節によって様々なことに取り組む百姓であります。
農園一家。三姉妹のプリンセスがいます。
さて、数ある百姓仕事の中で一番大切な仕事は何か。それは生業の「開拓」です。
白雪農園があるのは、周りに里山と田んぼが広がる田園の農村です。農村で暮らしていると、人生や暮らしを豊かにしてくれるさまざまな宝があることがわかります。こうした宝には、美しい風景や特産品など誰の目にも「見える」ものがある一方、時代が変わって埋もれたもの、これからの時代に新たに生まれる可能性のあるものなど、「見えない」ものも沢山あります。「百姓の開拓」とは、農村にある「見えない」宝に光をあてて掘り起こし、新たな農村の営みと未来を創ることです。アマゾンの奥地を切り開くようなものではありませんが、試行錯誤と工夫をしながら、身近なものから新たな生業を創るのが「百姓の開拓」です。
立山にやってきて5年。「村の開拓屋さん」として、進行中のものも含めて次のようなものを手がけてきました。
・農業経験、地盤ゼロから有機農法で多種多様な野菜・果樹・お米を育てる白雪農園を展開(2018〜)
・富山で最初(登録第一号)に農家民泊(白雪ゲストハウス)をオープン(2018〜)
・長らく歩く人の絶えた麓の立山道を活用した歩き巡礼(立山請)の再興(2018〜)
・富山で最後となった白炭窯(目桑白炭)の復興(2019〜)
・空き家となった農家住宅の再生と新たな農家の育成(2020〜)
・地元商店と農家が連携した新事業づくり(2020〜)
いくつかある開拓の一つとして取り組んで来たのが「白雪牧場」です。「白雪牧場」はどこから生まれ、どのような未来を開拓するのか。これからご案内したいと思いますので、少々長くなりますがお読み頂けたら幸いです。
「白雪」の由来となった雪景色
富山初の民泊「白雪ゲストハウス」をオープン
富山で最後となった白炭窯(目桑白炭)の復興
立山道を歩く立山講の再興
開拓の舞台 ー 耕作放棄地の原っぱ
さかのぼること5年前、2016年に立山町にわたしたち一家は東京から移住して来ました。農業を営むため、家の近くで農園を定める場所を探していたところ、ある土地に出会いました。
それが、東に立山連峰を見上げ、西に富山平野を見下ろす高台にある大善寺という土地です。サル・イノシシが出没して農作物を食い荒らすため耕作放棄された土地でしたが、人気の無い何もない原っぱが広がっていました。原っぱの開放的で自由なフロンティアのような空間が気に入り、2017年の末、東京時代の友人たちから貰ったカンパで土地を購入する契約を結び、農園の礎を置きました。
耕作放棄地の原っぱ
カンパをしてくれた東京の友人たち
野焼きをして開墾
原っぱにはしばらく人の手が入らず、雑草と低木が繁茂してましたが、野焼と草刈をして開墾。土の中にあって獣害に遭いにくい芋類(さつまいも、じゃがいも、里芋)を中心