【不完全燃焼の連載『祈りのかたち』を書籍化】視覚障がい者にも読める本「LOW VISION BOOK」を広めたい

【不完全燃焼の連載『祈りのかたち』を書籍化】視覚障がい者にも読める本「LOW VISION BOOK」を広めたい | harebutai

かなりの数が点字図書館に所蔵され、日々、利用されています。いずれ、そうした本で読書を楽しむ日も来るかと思いますが、今の私はインクの匂いを嗅ぎながら、紙の手触りを確かめつつ本を読みたいと思いました。

 読めないかもしれない私が、読める本を作りたい。こんな相反した希望が、このたび叶えられることになりました。視覚に障がいがある人が読める本、すなわちLOW VISION BOOKです。一般向けの書籍との合本というスタイルにするため、いくつか特徴を持たせました。

 視覚障がい者は縦書きよりも横書き文章の方が読みやすいというデータから、文章は全て横書きにしました。縦書きにした一般向けの本は右開き、横書きのLOW VISION BOOKは左開きとなります。この2冊を表紙でくるみました。

 視覚に障がいがありますと、新聞や教科書などに使われる明朝体のような太さが均一でない字はとても読みにくく、逆に、線を塗りつぶしたゴシック体の太文字は読みやすくなります。そのため、この本では丸ゴシック体を採用し、字画の多い込み入った漢字はその文字だけ少し大きいサイズのものにしてみました。また、白の紙に黒文字とするより、黒い紙に白文字にした方が読みやすくなりますので、LOW VISION BOOKは全ページ黒地に白文字となっています。

 さらに視野が狭いため文章の行替えが分かりづらく、何度も同じ文章を読んでしまうことが多々あります。行替えをスムーズにするためには、たっぷり行間を空ける必要があるのですが、それですとページ数を必要とするため、LOW VISION BOOKでは文章の下に罫線を引いて文の位置を把握しやすくしました。

 画像はモノクロにして、いくつかは、白色(一部は黒色)の補助線(輪郭線)を引いています。眼の病の進行が進むと、モノクロでも画像の内容を認識することができなくなってきます。例えば、空と山が描かれている画像があったとします。ほとんど見えなくなると、空は白く山から下は黒くしか見えません。山と空の境界線は認識できますが、山の画像の中に家があったり、川が流れていても認識できません。それを認識するために、山の内側にある家や川に輪郭線を引けば画像の内容を理解する手助けとなるのではないかと考えました。輪郭線が不要の方は一般向けの本の画像で確認していただけるようになっています。

▲『祈りのかたち』LOW VISION BOOKのレイアウト。黒い紙に白文字、白線の輪郭線を付けて認識しやすいように

▲一般向けは縦書きで右開きの本に。上のレイアウトのような横書きと併せて、1冊にまとめられている

 ▲『祈りのかたち』プロジェクトではインタビューなどでさまざまな立場の関係者から協力を得た

 視覚障がい者といっても、見え方は一様ではありません。加齢黄斑変性症の患者さんのように視野の中心部が欠損してしまう病ですと、LOW VISION BOOKでも読むのは難しいと思います。かといって、全ての方が点字を読めるわけではありません。点字を読めるのは視覚障がい者の10%くらいの方のようです。大人になってから見えなくなった場合、点字をマスターするには長い時間が必要となります。私も点字は読めません。

 最近はデジタル本もありますが、視野が狭い人にとっては拡大縮小しているうちに何が何だかわからなくなり、結局タブレットは放り投げてしまう始末です。LOW VISION BOOKはできるだけ単純に、手でしっかり本を握って紙をめくりたい自分の思いと、他の病の方の最大公約数を考えて作りました。