【不完全燃焼の連載『祈りのかたち』を書籍化】視覚障がい者にも読める本「LOW VISION BOOK」を広めたい

【不完全燃焼の連載『祈りのかたち』を書籍化】視覚障がい者にも読める本「LOW VISION BOOK」を広めたい
群馬県下仁田町在住の彫刻家、三輪途道です。視覚障がい者も読める書籍『祈りのかたち』を出版し、私のような視覚障がい者でも本を読む楽しさを伝えたいとクラウドファンディングに挑戦します。本は県内の仏像など文化財修理保存の現状を伝える内容になります。目標金額は252万円です。ご協力よろしくお願いいたします。

した。さらに昨年春からは粘土を使うようになりました。漆を塗った麻布を粘土に直接張り込んでいく古典的な脱乾漆は、興福寺(奈良)の阿修羅像に代表される仏像作りに用いられる技法です。

 これまで、仏像作りはあくまで仕事でした。

 しかし、目が見えなくなったことで心から「祈り」をかたちにしたくなりました。

 それは、自分本位の制作に対する懺悔の表れなのかもしれない。

 自分のためではなく、人に作品を届けたいと思うようになりました。

 私は、不完全燃焼のある仕事を抱えていました。

 それは、上毛新聞社発行の文化情報誌『上州風』(1999-2010年・季刊)の29号から32号まで連載した『祈りのかたち』が休刊で中断してしまったことです。

 内容は榛名神社随神像や小金銅仏、山王廃寺塑像、養蚕の神様、十一面観音像といった、県内各地のお像を紹介するエッセーでした。

 次第に目が見なくなっていく自分がいま、あらためて本を作ること。

 たとえ自分の本が完成したとしても、それを読めないかもしれない。

 それでも、「祈り」をかたちにすることへの欲求は日増しに高まっていきました。

 10年以上の時を経て、そして再び『祈りのかたち』は動き出したのです。

▲しじみの家族PAPA(脱乾漆)

▲『祈りのかたち』を掲載していた『上州風』。休刊となり連載は中断のままとなった

今回制作の書籍『祈りのかたち』は以下のような概要になっています。

B5判 上製本 【LOW VISION冊子と一般用冊子をセットにした特殊製本】
・LOW VISION冊子(白文字/中綴じ、本文92頁)
・一般用冊子(黒文字/コデックス装、本文136頁)
上毛新聞社刊/著者 三輪途道
定価:2,500円

[内容]
榛名神社随神像(つぶやき「随神像の修理」)/山王廃寺塑像(つぶやき「破片からのメッセージ」)/十一面観音像(つぶやき「悟りと飾り」)/小金銅仏(つぶやき「渡来人と辛科神社」)/社寺彫刻(つぶやき「職人けんちやんの話」)/宮田不動と奪衣婆(つぶやき「手は眼だ」)/養蚕の神様(つぶやき「蚕神猫を作りました」)/白衣大観音(つぶやき「白衣観音物語」)

かねてから取材していた群馬県内の仏像や神像、石仏に焦点をあて、その魅力と保存修理の現状を伝えます。

▲(左)日輪寺 十一面観音像(群馬県指定重要文化財)前橋市文化財保護課提供 像高128・5㎝ (右上)榛名神社随神門 左大神像 吽形/像高:141cm*首が落ち込んでいるため正確な計測不能 髪際高:126cm 画像提供:東京芸術大学大学院美術研究科文化財保存学研究室 (右下)山王廃寺出土塑像頭部 (群馬県指定重要文化財)白鳳時代 かみつけの里博物館提供 8.7×4.5×4.5cm

▲(左)砥石神社の奪衣婆に触れる著者 (右)2020年東京芸術大学大学院美術研究科文化財保存学研究室の調査
LOW VISION BOOK

 LOW VISION (ロウ・ビジョン)。聞き慣れない言葉だと思います。

 LOW VISIONとは、視覚に高度な障害があるものの、完全に視力を失ってはいない状態を指す英語です。

 今現在の、私です。30代後半から徐々に視野が欠ける目の病を患い、約15年の経過の中で、新聞や一般書籍など活字を読むことは難しくなりました。

 もともと読書好きな私は、「読む」ということに愛着を感じています。物が見えにくくなっても、白と黒の光の差異で何とか文字の認識はできます。点字や音声に翻訳された点字本や音読本類も