『Pacific Mother』の重要な登場人物であるハワイのKimiも、我が子を救うために葛藤しながらも、予定外の医療行為を自らの判断で受け入れました。
彼女は自身のお産を振り返り「素晴らしかった」と言います。近い将来、自分の息子に、そのバース・ストーリーをポジティブな言葉で伝えることでしょう。
〈ハワイ在住のKimiは、全米素潜り漁チャンピオン。Patagoniaアンバサダーとしても活躍〉
そして、バース・ストーリーの登場人物は、母と子だけではありません。「バースパートナー」の存在が大きな力となります。
NZ先住民マオリの伝統的な出産では、男性が子を取り上げるのは普通のことでした(太平洋諸島にも同じ文化がある)。さらに、彼らには「We are pregnant(私たちは妊娠している)」という考え方があります。
これは、妊娠・出産・育児とは「妊婦ひとりで担うものではなく、バースバートナーはもちろん、家族やコミュニティで支えるもの」という意味。もし、そんな社会だったら、母たちは孤独を感じることも、過剰な負担に苦しむこともないでしょう。
ちなみにバースパートナーは、夫や男性に限りません。性別も、産む人との関係性も自由です。
助産師でも、ドゥーラでも、親友でも、産む人の母親でも、心から信頼できて身を任せる相手であれば、誰でもいいのです。ジェンダーが多様化し、シングルマザーが増える社会においては、この自由なバースパートナーの考え方は多くのママを救うと信じています。
すべての出産が特別で、一つとして同じものはありません。
今ここで改めて、私たちの命を育んでくれた母のことを思い出し、感謝の言葉を口にしてみませんか?
〈Ravaとバースパートナー、満月の夜、波のない自宅庭のビーチで誕生した奇跡の子〉
さてここでもう一度、さっちゃんにバトンを戻したいと思います。
だいすけさんからバトンを受け取りました、福本幸子です。
生命の誕生とは、人生において最も尊いイベント。
選択肢が与えられ、心から安心できるお産は、女性の基本的人権。
私はそう思っています。
ここで、尊敬するフェミニストであり三児のビッグママ、長編でも監督を務めてくれるキャシーの言葉を紹介させてください。
「出産とは本来、女性にポジティブなパワーを与えるもの。でも、妊婦の権利が守られない状況でお産を迎えてしまい、多くの母が〝バース・トラウマ〟を抱えてしまっている。妊娠・出産・育子を通して女性を手厚くサポートできれば、母親と家族の人生にポジティブな影響を与えると、世界保健機関(WHO)によって証明されています。
1990年代、NZの女性たちは団結して、助産師主導で妊婦をサポートする画期的なLMC制度(※9)を勝ち取りました。日本を含む他国の助産師たちは、このモデルを参考にして、それぞれの国の制度に変化をもたらそうとしています。私は『Pacific Mother』を通して、そんな活動をエンパワーしたいのです」
「女性に、母親に優しい世の中を作ることが、海に、地球に優しい世の中につながっていく」
「女性が正確な情報を得た上で、産み方を自由に選び、万全のサポートを受けられれば、妊娠・出産はポジティブになる」
この考えに賛同してくださる方はとても多いと思います。
「ポジティブなお産」とは、病院でも自宅でも、医療介入のあるなしは関係ありません。産む人が自分の意志で選択し、生まれる子にとって安全であれば、病院での帝王切開でも、ホームバースでも、海で産んでもいいと思っています。