入、労働環境が向上するきっかけを作るために、何としてでも『Pacific Mother』を完成させて世に出したいのです。
このフィルムを通して、世界の助産師さんの社会的地位と雇用条件を高めること、日本においては「NZの助産師主導の継続ケアシステム=LMC制度(Lead Maternity Care)(※9)」の整備を目指していきます。
〈タヒチ在住のRavaは、ラグーンのビーチで第一子を出産〉
ここでまた、だいすけさんにバトンを戻したいと思います。
再びバトンを受け取りました、四角大輔です。
誰もが母から産まれてきたように、海はすべての生命の子宮。
陸上よりもはるかに多くの生物が生息し、地表の三分の二を覆う母なる海は、妊婦と同じくとてもデリケートです。
「昔の海はもっと美しかった」
Pacific Motherたちのバース・ストーリーを聞くなかで、ぼくたちはいつもこの嘆きを耳にしました。
数億年もの間ずっと、この星に恵みを与え続けてくれた海は今、過去もっとも危機的な状況にあります(以下データはそのほんの一部)。
・過去わずか40年で海洋生物の1/5が失われ、大量の酸素を生み、海の生物の1/4種が生息するサンゴ礁も約1/3が消滅(※11)。
・人類によるプラスチック汚染の最大の被害者が母なる海であり、2050年には海のプラゴミが魚の重量を超えるという(※12)。
・世界に生息する全7種のウミガメのうち6種が絶滅に瀕し、太平洋クロマグロは4.5%まで激減し、外洋性のエイとサメは70%減少(※13)。
ここで、さっちゃん(福本幸子)のパートナー、ウィリアムの言葉を紹介させてください。
彼は、酸素ボンベも足ヒレも付けずに102mまで潜るという、前人未到の世界記録を打ち立てたフリーダイバーであり、世界中を転戦して人体の限界に挑み続ける現役アスリートです。そして、海を守るために行動する環境活動家でもあります。
「地球に海ができたのは38億年前。その数億年後、最初の生命体が海に誕生。30億年もの間、この「海という子宮」は生命を育み、4億3千万年前に地上の生命体を誕生させます。今では、すべての種が何らかの形で母なる海に依存。酸素の半分以上は海で生成され、海流は地球を冷やして陸地に雨を降らせ、海のミネラルバランスは、私たちの体液と一致している。赤子にとって母親がすべてであるように、海はすべての生命にとってもっとも大切な存在なのです。」
「自分がどうやって生まれてきたか。その時、母はどう思ったのか。」
あなたは、ご自身の「バース・ストーリー」を知っていますか。
人生でもっとも心身への負担が大きい「妊娠・出産」を迎える女性たちは、母なる海と同じく、今、苦しみや困難に直面しています。
妊娠・出産は決して特別なことではなく、太古から人類が連綿と繰り返してきた自然な行為。なのに現在では、安全性が重視されるあまり、ほとんどのお産が医師主導で行われています(※1)。
日本やNZ、太平洋諸島には、代々伝わる妊婦主体の助産方法がありました。しかし、欧米の植民地化(日本の場合は、戦後アメリカの介入)によって、西洋医療が絶対となり、各地に根付いた古きよき伝統は一掃。
また、「バース・トラウマ」という言葉があるように、深い心の傷を抱えてしまう母親たちもいます。産む人の気持ちがどこかに置き去りになっていないでしょうか。
もちろん、ぼくらはすべての医療介入を否定するつもりはありません。今この瞬間も、医療によって多くの命が救われているからです(※14)。