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天然もののたいやき、初めて聞くと少し驚く表現です。小麦粉と小豆で焼くたいやきに天然も養殖もないだろう、そう思うのが普通です。しかし、たいやきファンの中では広く知られている言葉です。
もともとは、2002年に出版された『たい焼の魚拓』(宮嶋康彦著 JTB)の中で著者の宮嶋さんが使われた言葉です。鯛の一本釣りと一匹ずつたいやきを焼く一丁焼きのイメージがが重ります。それに対して5~6匹のたいやきを一度に焼くスタイルは「養殖」というイメージです。
多くのたいやき愛好家にとって納得できる言葉だったことからじわじわと広まって、たいやき好きであれば誰もが知る言葉となりました。今では店名や店の看板に「天然」を冠した店も出てくるくらいになっています。
一匹ずつ焼く「一丁焼き」は”天然もの”とも呼ばれます。
参考:ブログ記事 たいやきの天然ものと養殖もの
もともとのたいやきは、この天然と呼ばれる一丁焼きでした。しかし、焼くのが難しく量産に向かないため、後に開発された5~6匹を一度に焼く“養殖もの”が中心となり、廃れていったのです。昔ながらのたいやき店は家族経営の小さな店が多いので、高齢化による廃業も多く、今では全国で140軒程度になってしまいました。
一丁焼きのたいやきの型
それでも、一丁焼きのたいやきは人気です。東京都内で常に行列が絶えない「御三家」と呼ばれるたいやき店はすべて一丁焼きです。全方位から強火で焼くことで、皮をパリッと仕上げる一丁焼きのおいしさは、量産方式では出せないからです。
近年では、このおいしさを求めて新たに一丁焼きで開業する店も少しずつ出てきました。10年前に開業したたいやき ともえ庵もそのひとつです。
ただし、たいやき ともえ庵では、「天然もの」の語はお客さん側の表現だと考えているので、プロとして「一丁焼き」という言葉を使い続けています。
参考:ブログ記事 「天然もの」と呼ばれる一丁焼きのたいやき店は全国で133店 ~全国一丁焼きのたいやき店調査2018の結果~
参考:ブログ記事 「マツコの知らない世界」が知らない“天然たいやき”の今の世界
■たいやき ともえ庵のたいやきについて
当店「たいやき ともえ庵」は、減少しつつある本当のたいやきのおいしさを求めて開業しました。正直なところ、最初は「一丁焼きで作ればおいしいたいやきができる」という思いから研究を始めましたが、すぐにそんなに簡単なものではないと気付きました。普通のものに比べておいしいたいやきが多い一丁焼きですが、その中にも優劣があり、よりおいしくできる余地が大きいことがわかったからです。
そこで当店では「一丁焼きの中でも一番おいしいたいやきを焼く」ことを目標にして、材料を研究し、焼き方を工夫してきました。結果、まだまだ改善の余地があると思いますが、自分たちなりにはおいしい水準のたいやきができたと思っています。
「皮の薄さは日本一」
パリッとして香ばしい皮は、一丁焼きのたいやきのおいしさの大切な要素。なので、一丁焼きのたいやき店の多くは「薄皮であること」をうたっています。
当店のたいやきは、その中でもさらに皮が薄いことが特徴です。 “薄皮たいやき”のお腹の部分は、どのたいやき店のものも皮が薄く仕上がっています。この部分の薄さは他店のものもともえ庵のものもあまり違いはありません。
でも、大きく違うのは鼻先と尾の先です。写真を見ていただいてわかるとおり、ともえ庵のたいやきは、頭の先から尾の先までミリ単位の皮に仕上げています。ここまでしっ