っておらず、
水道や台所をひたすら修繕する日々が続きます。
生活がある程度不自由なくできるようになり、近所の方々とも交流が増えてくると
「いやー若い人が来てくれて嬉しいわぁ~(笑)」と
集落の皆さんから温かく迎えていただけたことを実感しました。
「あそこの土蔵をカフェにしてくれりゃ~助かるなー」と
冗談交じりによく言われました。
確かに、現在この島々にはカフェどころか営業店舗は
地酒を扱うお酒屋さんだけなんです・・。
お茶を飲んだりご飯を食べるにも
少し離れた集落か市街地まで車で行かなければならないんです。
「確かに不便だよなぁ~」という思いと
「もしご飯も食べられるカフェを作ったら、地域の人も立ち寄れるし
徳本峠を通る登山者も便利なんじゃないか?」
という思いがだんだんと膨らんできました。
そんなある日
懐中電灯を手に、あらためて土蔵に入ってみました。
暗いしホコリと蜘蛛の巣だらけで汚くてなんだか嫌だなぁ・・と内心ビクビクしながら
階段箪笥を登って2階へ上がります。
もともと米蔵だったためか籾殻や穀物の殻が落ちています。
ホコリが凄いし、、真っ暗だし・・そろそろ降りようと思い、ふと天井に光を当てると
「文政十二・・」との棟書きが目に入りました。
「あれ?ちょっと待てよ??前に読んだ本で、たしか播隆上人っていう
お坊さんが槍ヶ岳に登って開山したのが文政11年って書いてあったよな??」
「播隆上人と島々は直接縁はないにしても、登頂の翌年にこの蔵が建てられてるの?
191年(※2021年現在)も前というと・・
えっ?あの有名な上條嘉門次が生まれる18年も前に建てられたの?」
ちょっと・・いや凄くワクワクしてきたのを覚えています・・。
実はこの土蔵、家財がぎっしりと入り過ぎて
人が中に入ることができず、棟書きによる年代の調査ができなかったため
集落でも年代不明ということになっていたようです。
「この土蔵は江戸の頃から島々の人々の暮らしや
北アルプスへ向かう登山者たちを静かに見守ってきたって事か・・
このまま何もしないでおくだけじゃもったいないんじゃないか!?」
いつぞやの冗談話「島々にカフェを・・」という地域の願いとリンクし始めます。
私の本業は、電気・通信工事を行う自営業です。
長年電気系のリフォームを行ったりしていたおかげで
ある程度の工具と建築にかかる基礎的な知識は持ち合わせており
当初は土蔵を低予算でリノベーションして開店することはできるだろうと
簡単に考えていました。
「しかし、こんな歴史があって北アルプスに縁のある土地の
土蔵を1人で全部リノベーションしてしまったら少しもったいないのでは?」
と思い始めます・・。
どうせならアウトドアや山が好きな人が集まってワイワイと作業して完成を目指せば
このカフェに愛着も湧くだろうし、ここが賑わえば
島々もすこし活気が出るかもと思い、もともとこの母屋についていた屋号
「ますや」を活用して店名に決め、蔵に残る鏝絵(漆喰の細工)の「満寿屋」という文字を
意匠化しリノベーション活動を始めました。
タイミングよく私達の活動を紹介いただいた地元新聞の掲載をきっかけに
リノベーションイベントを2回開催することになります。
タウン情報誌 MGプレス 2019年6月27日掲載
それぞれのイベントに20名ほどの参加者が集まり、床板を剥がしたり釘を抜いたり、
剥がした板材を高圧洗浄したりと、島々町内会の方々も巻き込んで
ホコリだらけになりつつもワイワイ賑やかなイベントになりました。