させる」という方針を突如打ち出しました。「全国の政令指定都市で全国学テの結果が最下位という状況を脱却したい」というのが理由でした。
児童生徒の学力が伸び悩む背景には、貧困など社会的な背景があります。この方針は、原因を「教員の頑張りの足りなさ」とし、賞罰を与えるというもので、私は現場で働く教員の職業的な誇りを傷つけるものだと感じました。実際、私のところには、これまでつながってきた先生たちから怒りや悲しみの声がたくさん届いてきました。その声は、大阪市の教員だけではなく、全国の教員から発せられているものでした。
しかし、個人のSNSなどで発信された現場の「声」はあくまで私的なもので、社会には届いていないように感じました。「この声を見える化し、世の中に届くかたちにしなければ」と思った私は、この方針に反対するネット署名をしようと決意しました。署名は瞬く間にシェアされ、最終的に1万6千人筆以上が集まりました。その後、集めた署名は教育委員会と市長宛てに提出。多くの市民や教職員、団体の努力により、方針は実質見送りとなりました。
私は、この方針自体を止めたいという思い以上に、「自分たちの声は聞かれないのだ」と学校現場が絶望していく流れを止めたかったのです。
今まで抵抗があって署名なんてしてこなかったという先生から、「今回だけは、いてもたってもいられなくて署名した」「署名をきっかけに同僚と話せた」「意見を言える場ができて救われた」という言葉をもらいました。このネット署名を実施したときの手応えが、今回の「School Voice Project」につながっています。
●「動いたら変わった」という成功体験を、まずは大人に。
「自分の声が社会に届いたんだ」
「自分と同じ考えを持っている人がいるんだ」
「自分が声を発することで、何かが変わるかもしれない」
学校で働く大人たちがそう感じられたら、きっと学校はもっと元気になっていくはずです。
「学校は変わらないといけない!」という学校外からのメッセージやプレッシャーは、年々高まっています。ですが本当は、「変わりたい」「変えたい」と思っている人は、学校の中にこそたくさんいると思うのです。その「思い」には目を向けられず、社会から「学校はダメだ」「ひどい」と断罪されてしまうことが少なくありません。私は、学校の内側にある思いや力を引き出し、あたためることでこそ、学校はよくなっていくと信じています。
私たちは、「動いたら変わった」という成功体験を1つ1つ積んでいく必要があります。学校現場を変えることも教育施策を変えることも簡単だとは思いませんが、その成功率を上げるための仕組みとしてWEBアンケートサイトとメディアをつくります。一人では難しくとも、声を集めることは力になります。
教職員の方が一番実感していることだと思いますが、学校現場の疲弊と窮状は、もはや極まっています。後回しにすればするほど、手立てはもっと困難になるでしょう。だから、今このプロジェクトを立ち上げます。もう、無駄にできる時間はないと思うのです。
「学校はもっとよくなる」
School Voice Projectは、本当はそう思いたい皆さんと共につくっていくプロジェクトです。
School Voice Projectは、声が届き、実際に物事が動いていくという経験を、たとえ小さなことからでも、現場の教職員の方とともに積み重ねていくことで、教職員の方が「変えていける実感」「声が届いている感覚」を持てるようにすること。まずは、そこを目指していきます。
学