たポスターコンクールで入賞し、武蔵野美術短期大学で商業デザインを学びます。卒業後はグラフィックデザイナーとして社会に出ますが、当初は仕事があまり無く苦しい生活でした。そんな折に出会ったのが、クロアチア(旧ユーゴスラビア)で活躍する素朴画家についての新聞記事だったのです。農閑期や仕事の合間に居住地の美しい風景を描く人々が紹介されていました。「自分も絵を描きたい。ふるさとの美しい風景を描きたい。」苦しい生活の中でも‟心の生計を立てる“ために、胸の内に残る伊賀良村での思い出を絵に描き始めました。こうして二足の草鞋を履き、原田泰治氏は画家としても知られるようになりました。
◇ふるさと信州から日本全国、そして世界へ
本業であるグラフィックデザイナーとしての仕事の傍ら絵を描き始めた原田氏は、多方面からの勧めもあり、失われつつあるふるさとの風景を描き残すことになります。身体が不自由だったにもかかわらず日本全国47都道府県を取材して回り、一週間に一作品のペースで合計127点もの紙面掲載を成し遂げました。
連載が終了すると今度は世界にも目を向け、各国の美しい風景やその土地に暮らす人々の様子を大型作品に描き上げ、各地で展覧会も開催し大好評を博しました。「ふるさと」を愛する原田氏が「鳥の目」の広大さと「虫の目」の細やかさで描く作品は、日本のみならず世界中で多くの人々に親しまれているのです。
◇これまでの主な作品提供・出版
・朝日新聞日曜版フロントページ連載[原田泰治の世界]
・中央公論「暮らしの設計」表紙
・健康保険組合情報誌「すこやかファミリー」表紙
・日本郵政「ふるさと心の風景切手シリーズ」
・絵本「やまのおみやげ」「さだおばさん」「とうちゃんのトンネル」など
◇原田泰治作品の特徴「鳥の目と虫の目」「人物の表情を描かない」
原田泰治作品には大きな特徴が2つあります。
その一つは「鳥の目と虫の目」を使って描かれているということです。鳥が空から見下ろすように高い視点から風景を広く捉えて描いている一方、葉っぱや花びらの一枚一枚、石垣や屋根瓦の一つ一つまで、虫の目で見たように細密に描かれてもいるのです。幼少期を過ごした伊賀良村の高台で、足が不自由で立つことも歩くこともできなかった泰治少年は、ムシロの上に座り家族が畑仕事をするのを一日中眺めて待っていました。その時の唯一の楽しみが、丘の下に広がる村々の風景やその向こうにそびえる雄大な赤石山脈を眺めることと、自分の間近にある草花や虫たちの動きをじっと観察することでした。現在でも作品を描くときに重要な役割を果たす「鳥の目と虫の目」は、自由に歩き回ることができなかった幼い頃のこうした環境によって培われたものなのです。
もう一つの特徴は、登場人物の顔に目・鼻・口などが描かれていないことです。これも絵を描き始めた時から変わらない作風で、作品を観る人の心の目で人物の表情や気持ちを自由に想像してほしい、という想いが込められています。観るときの気持ちの在り方で人物の表情も変わって見えますし、自由に想像ができるので彼らの会話まで聞こえたり、また自分や家族を主人公にして絵を楽しむこともできるのです。
原田泰治美術館のその他の活動
◇地域の文化芸術発信拠点としての役割
原田泰治氏から波及する様々な芸術家の作品も展示することにより、地域の皆さんに文化や芸術を発信し続けています。
これまで開催した展覧会:[高橋まゆみ人形展][中島潔 絵画展][星野富弘 花の詩画展][永田萠 花と妖精の世界][田村映二の世界]など
また、館内に「市民ギャラ