はじめに・ご挨拶
はじめまして。NPO法人福井旧庄屋佐藤家保存会メンバーの風間直子と唐澤頼充と申します。
私たち2家族は佐藤家がある新潟市西蒲区福井集落に移住してきた新参者です。この地域に魅かれたのは、多くの人たちが守り継いできた佐藤家を入り口に、地域の歴史や暮らしの文化に触れ、農や自然、地域のひとたちとのつながりを持つことができたからです。
ソトモノだった私たちは、佐藤家に行っては囲炉裏の火焚き爺さんから昔の話を聞かせてもらったり、地域の人とつながったり、集まった人たちとごはんを食べたりするうちに、いつの間にか暮らしの一員としてコミュニティに受け入れられてもらった気がします。以来、佐藤家の掃除や屋根の材料集めや薪づくりなど、すべてがボランティアで行われている佐藤家の保存に関わらせて頂いてきました。
新潟市西蒲区福井集落について
まず、佐藤家がある福井集落についてご紹介します。
ここは、佐渡弥彦米山国定公園に指定される標高481.7メートルの角田山の麓にある農村集落です。旧北国街道沿いに情緒あるまち並みが残り、90世帯ほどが暮らしています。日帰り温泉があり、山、田畑と自然に恵まれた豊かな環境です。地域内を流れる矢垂川沿いは、住民たちの積極的な地域活動によってホタルの名所になっています。
佐藤家とは
そんな福井集落で唯一茅葺屋根の姿を残すのが「福井旧庄屋佐藤家」です。江戸時代後期に建築された三根山藩の庄屋の役宅が昔のままに残されています。
今から20年以上前の平成10(1998)年、長く空き家となっていた佐藤家が、いよいよ取り壊されるという話をきいた地元有志などが「茅葺とともに、この土地で受け継がれてきた暮らしや文化もなくなってしまう」と危機感を感じて保存活動を始めました。
▲保存活動の中心を担ってきた、斎藤文夫さん。福井集落をはじめ、郷土の写真を撮り続けてきた写真家、郷土研究家。「囲炉裏の火焚き爺さん 」を自称して、佐藤家を拠点に様々な催しを企画し続けてきました。(2014年頃撮影)
以来、この古民家を少しでも未来に残したいと願う人たちの支援やボランティアにより、建物の修繕を続けてきました。
「生きた」古民家として活用することを大切に
佐藤家は、ただ文化財として建物を残すだけでなく「活用する」ことで生きた古民家で有り続けようとしてきました。囲炉裏では火を焚き、自分たちの畑で採れた野菜で料理をつくり、釜戸でご飯を炊く。薪割りや、屋根の材料のカヤ刈りなど、かつて行われていた営みを、今も続けています。
また、地域文化や歴史を伝える展示や講演会、正月行事の企画運営といった文化活動も積極的に行ってきました。
▲文化事業。芝居・公演・シンポジウム、写真展といった歴史・文化に触れられる機会をつくっています。
▲カヤ刈り&薪づくり。屋根の葺き替えに必要な「カヤ」や囲炉裏で焚く薪を毎年ボランティアが集まり、少しずつ貯めています。
▲正月行事。毎年1月に餅つきや神楽舞、昔遊びなど、昔ながらの正月行事を楽しめる機会をつくっています。
佐藤家で生まれた新しい活動
また、この佐藤家に集う人たちの中から、この地域で新たな活動をしようという動きも出てきました。
週末に農作業や昔暮らしを楽しもうという「まきどき村」や、今は廃村になった角海村にいた「越後毒消し売り」の歴史文化や歩いた道を守り伝えようと活動する「毒消しの道プロジェクト」といったグループです。
▲まきどき村。毎週日曜日に佐藤家を拠点に、地域の田畑を借りて、野良仕事とご飯会を楽しむ農