<公害と出会い、向き合うための本>を出版したい

<公害と出会い、向き合うための本>を出版したい
「公害」という言葉を聴くと、何を連想するでしょうか? 公害は、過去完了形の出来事ではなく現在進行形であり、これからの私たちのいのちと暮らしの在り方にも大きくかかわります。そこで私たちは、<公害と出会い、向き合うための本>として『公害スタディーズ;悶え、哀しみ、闘い、語りつぐ』を刊行したいと考えます。

公害関係の入門書は1960年代から70年代にかけて数多く出版されました。それらの多くは当時の問題状況や必要な対策や研究について包括的に述べられていて、現在でも読み応えのあるものです。同時に、時代の推移のなかで新たな課題も生じてきており、公害そのものについて見聞きする機会が減少してくるなかで、新しい視点に立った入門書の刊行が待ち望まれてきました。

そこで本書では、13の代表的な公害事例を取りあげ、1項目5頁のコンパクトな解説を収録することにしました。また文字情報だけに頼るのではなく、写真や様々な図版を用いて問題を理解していただくことができるようにしました。

写真については、公害事件の取材をライフワークとしてきた写真家の皆さんのご協力できわめてメッセージ性に富んだ数々の写真を掲載させていただきます(桑原史成さん、河野裕昭さん、樋口健二さん)。

また、患者、家族、医師、企業関係者など、多様な立場からの経験についても原稿を寄せていただきました。さらに、公害を探究する学びを実践するための基本的な考え方や具体的な方法、さらにこれからの社会に向けてどのように公害と向き合っていくかについての多様な立場からのメッセージも収録することにしています。

本書を作成することで、公害と出会い向き合う方々が増え「公害の経験」に学ぶ大切さがいっそう共有されることで、公害と向き合い続ける市民社会づくりに貢献したいと考えています。

書籍は、ころから(http://korocolor.com/ )から刊行する予定です。

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本書は第1部が「出会う」(第1章・第2章)、第2部が「向き合う」(第3章・第4章)の2部構成です。ここでは各章の概要をお知らせします。

<第1部 出会う>
第1章 生きることの危機;さまざまな公害

公害は、「呼吸する」、「食べる」、「働く」など、生きるうえで不可欠な行為を介して人間のいのちと暮らしを蝕みます。 共通しているのは、人びと、とりわけ様々な意味で弱い立場におかれている人びとこそ傷つきやすく、きわめて多様で重層的な困難がもたらされている、ということです。 本章では、公害はなぜ発生したのか、人びとにどのような被害をもたらしたのか、発生以来どのような経過をたどってきたのか、何が解決され何が未解決であるのか、を13の事例を通して見ていきます。

〔13の事例と用語解説〕
大気汚染、水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、カネミ油症、化学物質過敏症、地盤沈下、軍事基地、アスベスト、三井三池炭塵爆発、福島原発事故、足尾鉱毒事件、薬害スモン 用語解説(環境権、公害健康被害補償法)

第2章 語られた公害
公害は、被害者はもちろん、事件を引き越した加害者、取り締まる行政、被害者の治療にあたった医師、公害告発に立ち上がった市民など、多くの人達の仕事と生活を一変させます。 チェルノブイリ原発事故によって移住を強いられたベラルーシのある女性は、「私の人生は事故に遭う前と後とで二分される」と言いましたが、それは公害と遭遇した人びとに共通する思いでしょう。 本章では、様々な立場から公害に直面し、悶え、哀しみ、闘ってこられた方々の語りを通して公害を生きることの意味を考えます。

〔様々な立場〕患者、患者会、医師、支援者、行政、企業、農業者のそれぞれの立場から。

<第2部 向き合う>
第3章 公害を探求する学び
公害は、足尾鉱毒事件の時代から今日に至るまで、しばしば被害者自身にとってさえ、きわめて見えにくい、捉えにく