はじめまして「一般社団法人リヴオン」代表理事の尾角光美(おかく・てるみ)と申します。リヴオンは「グリーフ(※)ケアやサポートが当たり前にある社会」の実現を目指し2009年に設立し、死別や、喪失を経験した人たちに、必要な情報、わかちあいの場、学びの場を全国で提供してきました。
※グリーフとは…死別や喪失から生まれてくるその人なりの自然な反応、感情、プロセス
東日本大震災の際には、冊子『大切な人をなくしたあなたへ』を1万部発行し、行政や寺院などと連携し、東北3県の仮設住宅や追悼法要を通じて、多くのご遺族にお届けしてきました。
今回、新型コロナにより大切な人を亡くした方や、臨床現場にいる医療従事者や宗教者に向けて、必要な情報を届けるべく、緊急プロジェクトを立ち上げました。国内では5,000人、世界では200万人を超える方々が亡くなられています(2021年1月末時点)。これはただの数字ではなくて、この一人ひとりは誰かにとっての、おばあちゃん、おじいちゃんだったり、親や子どもだったり、みんな誰かの大事な存在です。でも、新型コロナ下では、その周囲の方が十分なお別れができないという現状があります。誰もが、いつ大切な人を失うか分からない今この状況を生きているからこそ、この冊子とウェブサイトを形にして届けたいと考えます。
このプロジェクトについてまとめた2分間の動画をつくりました。ぜひご覧ください!
新型コロナによる死別への影響
2020年2月以来、新型コロナウイルスによる死者は日本国内で5,000人、世界では200万人を超え、とりわけ年末以降、死者数の増加ペースも年末以降、加速しています。
アメリカの最新の研究データによると、
一人の人がコロナで亡くなると約9人の家族や近い人が影響を受ける
と発表されています。死亡者が急激に増加している日本国内ですが、その分、影響を受けている人も急増している可能性があります。
「あいまいな喪失」による実感のなさ
この状況下により、新型コロナでの死別にせよ、それ以外の死別にせよ、最期にお別れを十分にできなかったり、葬儀のような亡き人を想い、つどう機会も中止や縮小されているため、多くの人が「あいまいな喪失」(※1)を経験しています。
(※1)失ったことが不確かな状態から生まれる反応により、亡くなった実感がもてなかったり、喪失と向き合いにくい状態。
私(尾角)自身も、19歳のときに母を自殺で、28歳のときに兄を不慮の死で亡くしているのですが、兄のときは遺体に直面できず、会えないままお別れをしたので、しばらく実感もわかず、遺骨になって戻ってきたのは兄ではなく、どこかに生きていてくれているのではないのかと感じ辛い時期が続きました。今でも、兄の面影があるような人がいると、目で追っている自分がいます。
家族へのサポート・グリーフケアの情報提供がある海外
海外では、例えば初期に感染者が多かったイタリアの病院での実践にならい、イギリスの医療従事者たちが感染者と最期の食事や、会話をするためにタブレッド端末などを利用するなど、亡くなる前にもサポートが充実しています。
また遺族へのグリーフケア、死別後のケアやサポートの情報も、ロンドン市はウェブサイトの目立つところに掲載するなど、必要な情報が手に届きやすいところにあります。
ロンドン市のウェブサイト 新型コロナの情報 トップページに「グリーフをどう扱うか」(Coping with grief)
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