私、阿部浩一は1976年1月、山口県生まれ。書店員、NGO職員、社会福祉法人職員、NPOコンサルタントを経て、現在は2021年4月に東京都東村山市で創業した不動産屋、合同会社うんすい宅建の代表社員・宅地建物取引士です。
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起業する人と聞いて、あなたはどんな人を思い浮かべるでしょうか。勇気がある、意識が高い、アイデアがある、野心家、夢中になれることがある人……。起業といっても、上場企業をめざすものもあれば、個人で小さなカフェを経営するものまでさまざまです。
おそらく多くの人にとって、起業はぼんやりしたもので、少なくとも強者のカテゴリーだと考えるでしょう。終身雇用が崩壊し、働くことを取り巻く時代の変化を感じない人はほとんどいないでしょうが、それでも大多数の人が組織に絡め取られながら、嫌な仕事を我慢して続けています。
だけど、私から言わせれば、組織の中で精神的に安定していられる、我慢ができるというだけで、十分に強者だと思います。
私は一人の時間をこよなく愛している一方で、人が好きです。誰かと組んでプロジェクトを行うこと、人と人を結びつけること、その場を仕切ること(笑)等々。ですが、組織の一員になった途端に、ダメになってしまうのです。
うつ病とパニック障害を発症し、入院したのは2018年のことでした。どんなに周囲に恵まれていても、がっつり組織の一員になると心身が拒絶反応を起こすのです。本当に不便。朝の満員電車ではかなりの確率でお腹が痛くなり、同時に尿意をもよおすタイプです。
人間嫌いではありません。むしろその逆で、私には自由に泳ぎながら、いろいろな個人(あるいは組織)とつながる生き方が合っていると考えています。
合っているというより、そのようにしか生きられないのです。
多くの人がどこかへ属するのが当たり前だと洗脳され続けてきた社会において、それができない私は自分のことを、「弱者」だと思っています。
実際に組織を離れ、自分で事業を興す意味での「起業」なのか、固定観念や自分に不都合な諸々からの精神的な「独立」なのかは読む人に委ねたいと思います。あくまでも、きまじめでやさしい人が、自由に生きていくためのガイドとして存在できればと考えています。
私の会社のキャッチフレーズは「同性カップルのための頼れる不動産屋」「『マイノリティーにやさしい』はみんなにやさしい」です。
同意書の一文にあった「LGBTの方は入居お断り」の文字
2020年12月、“「LGBTの方は入居お断り」同意書にあった一文。その部屋の契約をやめた当事者が動画で伝えたこと”という記事がウェブ上に掲載され、改めて驚きと怒りが湧いてきました。
やっと見つけた理想的な物件。ところが不動産屋から渡された同意書に、「LGBTの方は原則お断り」と書かれており、混乱で怒りがこみあげてきたというLGBTs当事者の方の話です。
住まいを提供するという仕事は、鉄道などの交通インフラと同じで公共性の高いものだと思います。生活の基本は、安心して暮らす場所があって、食べて寝て仕事をするということ。それは、どんな属性を持っている人でも等しく同じものです。
高齢者も多い大家さんの理解が得られにくい
賃貸住宅の大家さんには高齢者も多く、LGBTsに対して偏見や誤解があるケースが多いことも、物件探しの困難につながっています。大家さんに入居者探しを依頼されている業者は、どうしても大家さんの側に付くことになりがちです。また、業者自身が偏見や誤解を持っているケースも見受けられ