生地屋ですが私たち、服をつくりました。
2020年は一年をかけ、私たちは生活スタイルを変えざるをえなくなりました。これにより、これまで常に求められてきたスピードや厳密さを少し横に置き、自分が、周りのみんなが幸せで快適に過ごす”時間”に、これまで以上の価値を感じる様になりました。
2020年の冬、地方の生地屋が生地を作る一歩先、製品にしてみなさまにご覧いただきたいと思ったきっかけを、聞いていただけますか?
今改めて気付くこと
兵庫県西脇市、自然豊かなこの街に織物の産地があります。
糸を染め、染まった糸を並べて生地に織る。
私たちは、播州織とよばれる先染め織物を製造販売するテキスタイルメーカー、島田製織株式会社です。繊維専門商社である私たちは、取引先からの要望にいかに早く正確に応えるかを第一に、創業から約90年間仕事をしてきました。そんな中で迎えた2020年、突然やってきたコロナはアパレル産業をも直撃し、私たち播州産地にも大きな影響を与えました。
これまでずっと走り続けた私たちに突然訪れた仕事がないという状況。この空白に直面した時、“もしかしたらこれまでの私たちには急ぐあまり、見えていなかったことがあるのではないか。効率が悪く時間と手間のかかる仕事。これまで避けてきたこれらを、もしかすると今こそじっくり味える、とても贅沢なタイミングがきたのではないか”と思いました。
そんなことを考え、社内に溢れるこれまでに作り上げた生地を振り返った時、時の流れにのり切れず播州産地で今そっと姿を消しつつある織機のことを思い出しました。効率が悪く手のかかる古い機械を、なんだか妙に可愛らしく愛おしく思えたのはこの瞬間でした。
今回の挑戦
播州織の歴史は約200年。
この長い歴史の中で、播州織の最盛期を第一線で支えた織機があります。改良された織機が普及した今、播州産地においてこの織機を有する機屋は残りわずかとなりました。
私たち島田製織も自らは提案しなくなった、“この機械で生地を織る”ということ。私たちが製品までを自社でハンドリングするからこそできること。今回は、そんな織機、力織機(シャトル織機)にスポットをあて、製品にしてみなさまにご覧いただきたいと思いました。
シャトル織機が消えつつある背景に、量産向けに改良された織機に比べ一日に織ることのできる数量が少ないことや、欠点とよばれる使えない箇所ができやすい、巻き取って準備した横糸がなくなる度にそばで補充しなければならないなど、とにかく時間と手がかかり、今の時代にそぐわなくなったことがあります。(エアと呼ばれる空気圧で糸を飛ばす織機と比較すると、生地にもよりますが、その製織能力は1/4程度と言われています。)
一方、時間をかけゆっくり織ることで生地はふっくらとし、更に今回は、糊付けという工程を省き糸への負担を最小限にすることで、コットン本来のやわらかな風合いをより一層感じていただける様にしました。
今回私たちが掲げたテーマは、”作る工程をいつくしむ”
これまで何度も見てきた、生成りの糸に色が付くまでを。(染色工程)
染まった糸を並べて織り、糸が生地になるまでを。(製織工程)※動画はスローで再生です。
たくさんの職人の技術と愛情、手のかかるこれら工程を、私たちがバトンとなり一緒に追いかけて、まずは贅沢な生地を作り上げました。そして千葉県の縫製工場で服に仕上げます。私たちが糸からじっくり向き合った製品を身にまといいただくことで、毎日を懸命に生きるみなさまに、この背景と同じゆっくりとした贅沢な