陽エネルギーであり, 言い換えれば, 植物とは, 太陽エネルギーが構造エネルギーに転換され, 蓄積した姿(太陽エネルギーの貯蔵庫)なのです。この「ムラ」を形成し, 維持する営みが植物の生命であり, 一方, このムラが解体される過程で生み出されるエネルギーを使って生命を維持する仕組みが動物なのです。すなわち, 動物は植物の従属体であり, 植物なしに動物は存在しえないのです。
国連で持続可能な開発目標(SDGs)が採択され, 世界でそれを具現化する活動が提案されています。様々な分野, 提案が包含されていますが, 「持続的な社会システム」は, その核となる最重要課題です。持続的な発展のためには持続的な資源利用システムが必須となり, この観点から地球上で持続的なサイクルを形成している植物系バイオマスが今改めて注目されています。
木材利用の歴史は古く, 建材, 燃料, 紙など様々な形で既に大量に私たちの生活空間に入り込んでいます。最近では, 木材液化, 炭素繊維化などの技術も提案され, さらにアルコール発酵によるエタノール製造原料としても再注目されるなど, 木材を原料とする大規模な工業化システムも動きつつあります。
石油から植物へ… 工業原料の流れが今変わりつつありますが, 大規模にシフトする前に, 私たちは今一度真摯に生態系(植物)を見つめなおす必要があります。石油はバイオ起源ではありますが, 現時点では生態系外に隔離状態で存在する隔離炭素資源です。
一方, 植物系バイオマスは生態系構成要素であり, 全ての生命体の基盤を構成しています。
利用可能な資源として石油と同列に扱うことは危険です。その存在は人間と対等関係にあり, 形成から消滅までの間に生態系構成要素として様々な仕事をしています。
人間が理解できる部分のみを切り取り, 利用し, 廃棄するこれまでの姿勢は, 生態系を攪乱する行為そのものではないでしょうか。
リグニンは環境に応答してその三次元構造が形成されるため, 全てのリグニンはその構造が異なるのみならず, 形成された後も環境に応答してその構造が変化します。さらに, 植物体から取り出すときにその処理環境に応答して構造が大きく変わり, いつになっても構造を確定することができません。このような特性は天然物の中では極めて異質であり, 構造の特定とその精密制御が求められる工業製品としての活用は極めて困難です。研究と特許のみ存在し, 製品が世界に皆無という現状は, リグニンがいかに現行の工業規格から外れているかを物語っています。
リグニンを製品化するため,リグニンに各種置換基を付けることによって難しい構造を隠し(これを改質と呼ぶ),既存製品の中に埋め込む,という取り扱いがこれまで広く行われています。結果として形になった製品は,「リグニン製品」と呼ばれ,「リグニンの有効活用」に成功したと広報されています。リグニンの構造を特定せず,理解せず,制御せず,リグニンを他種製品の中に隠ぺいする行為が,はたしてリグニン利用でしょうか!
私がもしリグニンなら,とても悲しくなるでしょう。
植物の存在を動的に理解し,その組成,構造,機能を解析,理解,肯定し,その上で,その機能を材料の中で滑らかに生かす,そして滑らかに生態系に返す… このような観点から開発した植物系分子素材の総合的応用技術が「相分離系変換システム」であり,そこから誘導されるリグニン系新素材が「リグノフェノール」です。炭水化物は発酵原料などに有用な糖液としてリグニンと完全分離