しました。
2018年に彼女は他界しましたが、それまで、講演会の場やイベントなど、さまざまな場面でこの本は届けられ、多くの人々にその感動が伝わりました。私もその一人でした。これが難しい化学式だらけの書物だったなら、敷居が高すぎて敬遠していたかもしれません。当時としては珍しく化学の修士号(お茶の水女子大学大学院)を持っていた彼女は、できるだけ多くの人に分かりやすく伝わるようにという目線を忘れませんでした。
地球上のすべての存在に意味があるという、愛情が伝わってくるような、彼女の描いた可愛いイラストも添えられています。
気候変動や環境問題など、まるで地球にヒトがいること自体が悪なのだ、という論調もあるなかで、この書物は「ヒトがいるからこその地球」という揺ぎ無い視点に立っています。
また、地球環境を保全するためには、人間活動を抑制しなければならない、という論調もあるなかで、この書物は「人間活動を後退させることなく、発展し続けるための具体的な道」を示してくれます。
「ほとんどの石油由来製品は、樹木から代替することができるかもしれないという」、計り知れない樹木の可能性についても言及しています。
あたかも、地球が意志をもってその道を準備し、ヒトがそれを見つけることを待ってくれているかのようです。
発展しつづけるために必要なものは、地球からすでに与えられているのかもしれない。
地球環境をかく乱はするけれど、現在の便利な社会をもたらした石油合成化学の技術にたどり着いていることすら、まるで予定調和のように感じられ、雷に打たれたように感動したことを、今もなお鮮明に覚えています。
石油系製品を生物系資源によって代替した製品、再生可能エネルギー、さまざまな環境配慮型技術の取り組みが活発化している現在でもなお、この書物は、地球の物質循環や、地球環境と衝突しない社会の在り方について、私たちに大切な視点をもたらしてくれる優れた入門書となっています。講演会から二十年以上が経過しても、その輝きは失われていません。
彼女が亡くなるとともに、「森の風プロジェクト」の活動は休止し、この書物は絶版となりました。
けれども、私は大きな感銘を受けたこの素晴らしい書物を、さらに多くの人たちに読んでもらいたいと願い、原著者の舩岡先生の了承を得て、新たな情報を加えて、改書名『地球の未来木(Key)~分子レベルのリサイクル~』として発行したいと考えています。その趣旨に賛同した三名のメンバーで、そのための発行プロジェクトを立ち上げました。
『地球の未来木(Key)』発行プロジェクト(代表)
椢原友紀子(バイオマストゥラブ(株)代表)
雨森眞知子(元「森の風プロジェクト」代表・故人)
市民グループ「森の風プロジェクト」は、1998年12月に行われた舩岡先生の講演の録音テープを起こして編集し、本を出そうという目的で、1999年1月にスタートしました。本のもとになった講演というのは、市民グループ「地球交響曲を共に奏でる会」が主催した環境講座だったのですが、このグループの有志4人と、舩岡研究室の学生3人が最初のメンバーでした。当時、環境を勉強するといえば、ひたすら環境破壊の惨状や資源枯渇の重大さを追及することだったり、それをどう後始末つけるかといったところに終始し、未来は絶望的という印象がいつもつきまとっていました。そんな世相にあって、先生の環境についての考え方や解決のための具体的なテクノロジーのお話は、私たちにとって