はじめに・ご挨拶
初めまして!私は日本舞踊家、花柳優舞音(ハナヤギユウマイネ)と申します。幼少から日本の伝統芸能である日本舞踊を習い、今は師範として日本舞踊をお教えしたり、所作指導の講師を務ております。
さて、突然ではありますが一つ質問をさせてください。
「日本舞踊、見たことありますか?」
これは私が初めてお会いする方へ必ずする質問です。そしてその返答の多くは「一度もないですね」「着物で踊るやつでしょ?」「歌舞伎はあるけど、日本舞踊は…」
日本の伝統芸能として息づいてきた日本舞踊ですが、その土地に住む現代の日本人にはかなり縁遠いものとなってしまっているのが現状です。私はその現実にいつも悩んできました。日本人が生み出し、守って、育ててきた美しい文化が時代の流れと共に少しづつ消えて行ってしまうのではないか。私たちが忘れてしまったら、生み出し守ってきた先人たちの思いはどうなってしまうのか。未来にこの美しい文化を残すために、私には何ができるのだろう、と。
このプロジェクトは二人の発起人により立ち上がりました。一人は私、そしてもう一人はベーシストのFinです。Finとは以前ミュージカルで共演しそれ以降良き戦友として切磋琢磨して参りました。
そんな折、「何か自分のやってみたいことを舞台で表現してみないか」と舞台の企画をご提案頂きました。
その時すぐに“やってみたいこと”が閃きました。私がやりたいこと、それは「新しい伝統の形を生み出す」こと。日本の伝統を愛しているからこそ、その伝統をアート作品として今の時代へ昇華させたい!今を生きる私たちが、これからの未来に向けた伝統になる作品を!
すぐさまFinと話し合い2019年「東京メトロポリス」を立ち上げたのです。メトロポリスの意味は首都。日本を代表する首都東京のように、日本を代表するパフォーマンスチームになろうと思いを込めて名付けました。初陣公演は伝統芸能の聖地である、国立劇場。三味線、箏、ドラム、ベースの生バンド、そして日本舞踊とダンス、これらを組み合わせた「夢双(ムソウ)」という作品を生み出し公演を成し遂げました。劇場には日本舞踊を愛する方や、我々を見るために初めて国立劇場に足を踏み入れた方などジャンルを超えた様々なお客様がお越しになり、皆様から沢山の賛否両論をいただきました。「この劇場にふさわしくない」「あのチームはなんだ?」「日本舞踊って美しいものなんだね」「試みが面白い」皆様の心に響きその上で議論が生まれた、これこそが答えであり私たちのやる意味でした。伝統芸能が未来を生きるための「伝統の壁」が揺らいだ!そして未来に向けて作品を生み出し続ける事が大事であると確信しました。そして我々は2020年6月ネクストステージを迎えるため公演を企画し大々的に打ち出しました。
ですが新型コロナウイルスの影響で我々は苦渋の選択に迫られ、2020年の公演を断念、延期とせざるを得ませんでした。絶対に公演を成し遂げたい、エンターテイメントで多くの方にパワーを与えたい、「舞台」が生み出す大きな力を信じて1年越しに公演を決行することとし、いよいよ念願の舞台が押し迫ってまいりました!
このプロジェクトで実現したいこと
それは「伝統の壁に風穴を開ける」こと。
私は先にも申し上げましたが日本の伝統を心から愛しています。島国日本には、狭い中にもそれぞれの土地に伝わる音楽、言葉、舞踊が存在しています。その一方で、アンダーグラウンドから生まれた言語やファッションなど「ニュアンスの文化」も生み出し続けるというとても不思議な国