そのためには、”皮”を”革”にするパートナーを探す必要がありました。
まずは、鹿皮を持ち込みでなめすことが可能なタンナーを探しに。
日本には兵庫、和歌山、東京に皮なめしをするタンナーが集中していますが、鹿の皮を輸送するコストを考え、福岡から一番近い兵庫県に的を絞り、多くのタンナーを訪ね歩きました。
ですが、皮なめしは職人の世界。
革の知識がほとんどない、ど素人であるわたしの訪問に門前払いのような対応をされたり、自然の生き物(ダメージや虫食いがある)かつ、牛よりもかなり小さい面積の鹿革に前向きなタンナーは多くなく、
「鹿革、、だめかなぁ。。」
と心が折れそうに。
そんな疲労困憊のなか、タツノラボというジビエの皮を専門になめしをしているタンナーさんを訪問しました。
丁寧になめされた革はとても美しく、技術の高さはもちろんのこと、鳥獣問題に革なめしから向き合っているまっすぐな姿勢に心を動かされ、
「ここの技術でなめされた鹿革で、しっかりと製品化すれば化けるのでないか…!!」
と一筋の光を見出し、帰路の新幹線に乗った記憶をいまだに覚えています。
小さな革命と、同志
革をなめすパートナーは見つけましたが、次に大きな課題が。
皮を革にするためには、一定の量・枚数が必要だということです。
自分で捕獲する鹿だけでは製品化するまでの枚数を確保することが難しく、以前から知り合いであった「しかや」さんにお声がけしました。
もともとアパレル大手ブランドに勤めていた方もおり、このプロジェクトが実現可能かどうかを何回も話し合い、ついに鹿の皮を保存するための小屋づくりを開始。
3人で腰を痛めつつ、夜まで続く作業をしたのはいい思い出です。。
また製品化においては、デザインはわたし自身で行い、縫製はプロにおまかせすることに。
製品化をお願いする職人探しも、かなり苦労しましたが、ここだ!という熟練の職人がいらっしゃる企業様に、製品化をお願いするに至りました。
鹿革って、どんな革?
「目指したいことは、なんとなくわかった。…でも鹿革って、どんな特徴があるの?」
という疑問や質問に答えていきます。
”革”のスタンダードといえば牛革ですが、古くは縄文時代から、鹿革は日本人の生活と歩みをともにしてきました。
鹿革は戦で使う道具から、生活用品まで幅広く使用され、現在では山梨県の名産品”印伝”の革素材として使用されています。
現在でもそのしなやかさや強靭さから、鹿革製品の需要はありますが、国内で出回っている約98%が海外製。
実はニュージーランドでも、以前は鹿が”害獣”として処分されていましたが、その価値を見出し、現在では持続可能な資源として肉や皮がマーケットに出回っています。
日本では牛肉を食べる文化が広がることで、牛革も比例して広まっていきましたが、自然からの贈り物である貴重な鹿の資源を無駄にせず、しっかりと循環させる取り組みにチャレンジしています。
”革のカシミヤ”とも呼ばれる鹿革のポテンシャルを、簡単に8つまとめました。
軽い
柔らかい
通気性に優れている
吸湿性に優れている
手触りがしっとり滑らか
型崩れしにくい
メンテナンスが楽
長期間保たれる柔軟性
これらの特徴を引き出しているのが、鹿がほかの動物に比べ、皮繊維が群を抜いてとても密に絡み合っているためです。
例えるなら、ふつうの皮が直毛や若