として貸し出したり。また営業再開後にも、一定以上の売上を安定して確保する試みの一つとしてドリンクのサブスクリプションサービス(mikko prime)を行ったりもしました。
2020年5月19日の日付の入った手元に残されたメモには、こんな思考の断片が残されていました。
仰々しく「僕らのNew Normal」とタイトル書きされた裏紙のメモ(撮影:塚原)
・いつでも開疎なモードに移行できる状態をつくること
・全てのコンテンツをオンライン化することは都市でもできる。地方だからこそ、開疎という手法を取ることができるのでは?
・効率性や、かつての規範を無視して、自分たちの気持ち良さ(感性)ベースで、これからのカフェの在り方や営業の形を見据えて、実践していきたい
・「集まること」それ自体が悪ではない。「集まり方」に問題の本質はあって、そこを工夫する(アップデートする)ことはできないか?
そんな「新しい普通」に向けた試行錯誤の末、暫定的な回答として行き着いたのが「屋外空間でのカフェ営業」というアイデアでした。
「開疎」という言葉は、昨年2月に出された『シン・ニホン』の著者である安宅和人さんによる造語で、「密閉(closed)× 密(dense)」ではない「開放(open)× 疎(sparse)」という、一つの方向性を表す言葉です。ちょうど1年前、今回のプロジェクトにも関わってくれている友人の西山卓郎さんと始めた読書会のテーマがこの本で、それから約半年に渡って著者の思考と並走したことが、今回のプロジェクトが生まれる間接的なきっかけにもなりました。
WHY② この土地の魅力を引き出し、課題も同時に解決したい
山と、その山を削った川がつくる段丘の上にある佐久穂町は、いわゆる中山間地と呼ばれる場所です。課題先進地域などとと言われる一方、多くの同様の地域がそうであるように佐久穂町にも魅力的な屋外空間がたくさんあります。別の言い方をすれば「里地里山」的空間。自然と都市の境界にあって、自然と人とが共につくりあげる空間の魅力には、住めば住むほど惹かれていきます。魅力ある佐久穂の日常の風景やまちなみ(Photo by Alex Hogg)思いっきり自然側に振れば、このまちの代表的な景勝地として挙げられる白樺の森(日本一の白樺群生地)は僕の店のある中心部から車で20〜30分の「すぐそこ」の距離にあったりします。
片や、このまちの風景の魅力はこうした景勝地のみに限らず、長い時間をかけて形作られ続けてきた里山、自然と人間の営みがつくりあげる美しいまちなみなど、枚挙にいとまがないほど、人の暮らしの中に斑模様に、そこかしこに存在しています。
白樺の森のさらに先にある、苔の森と白駒池。(Photo by Alex Hogg)
多くの日本の離島や中山間地域にある集落がそうであるように、過疎(ネガティブな方の意味の「疎」ですね)的状況は刻一刻と進んでいることは、たったここ数年の間でも肌で感じていることです。いまある風景が人々の小さな働きかけの集積の末に成り立っているものだとしたら、過疎が進むことはこれら里地里山らしい風景が失われていくことでもあります。
もともと、さまざまな動機やきっかけから移住先として選ばれることの多かった佐久穂町は、新しく学校ができたこと、そしてこのコロナ禍もあいまって、さらにたくさんの方が新たに住みはじめることが予想されている地域でもあります。
あらゆる場所に持ち運べるカフェをつくることで、この地域にずっと住まれてきた方や新たに住む方と一緒に、こ