ジティブに、望む未来へ歩み出すことにしました。
長老に聞きましたが、1970年代頃まで釜沼北集落25世帯はすべて茅葺屋根で、共有地に約2ヘクタールの茅場を持ち、茅葺屋根は20〜30年毎に葺き替えるので、毎年1軒の屋根を順番に集落総出の「結」で葺き替えることで、屋根の地域自給が成り立っていたそうです。
しかし、今では茅場も失われ、知恵も失われ、「結」も失われ、コミュニティも高齢化となり、茅葺きの文化は途絶えてしまいました。
茅葺きを再生することは過去に戻るのではなく、「現代の結」でコミュニティを再創造し、資源を地域循環させ、美しい日本の風景を「現代の普請」で創造する「いのちの彫刻」であり、新しい未来へ向かうことなのです。
気候変動、パンデミックなど地球規模の問題は、自然と人が分断されている現代文明のあり方に問題の根源があります。
僕らは茅葺き再生を通して、みなさんとともに持続可能な共生社会を創造したいと願っています。
<茅葺きをきっかけに始まった小さな地球プロジェクト>
台風被災後、同時期に出てしまった集落内の3軒の空き家、古民家「したさん」、古民家「けいじ」、古民家「じいだ」も引き継ぐことを決心し、古民家「ゆうぎつか」の茅葺き再生だけに留まらず、活動は里山全体へ広がっていきました。
茅葺きを再生すると同時に3軒の空き家も引き継ぎ、暮らしと社会に地球の循環を表現する「小さな地球」プロジェクトを始めることへ発展し、2軒の空き家は今まで棚田に通っていた方が移住を決め、もう1軒の空き家は農地と山林を含む広大な土地ごと共同購入し、みんなのコモンズ/共有財産とすることにしました。
2軒の空き家である古民家「けいじ」と「じいだ」は今まで棚田に通っていた方が移住を決めてくれました。
古民家「けいじ」には広大な里山フィールドにパーマカルチャー農園とタイニーハウスビレッジを建設する夢を持って、横浜から福岡達也さん梓さん夫妻が赤ちゃん連れで移住しました。
古民家「じいだ」には「太鼓の里」をつくる夢を持って、毎年収穫祭で棚田のウッドデッキにてお祝いの演奏をしてくれる和太鼓グループTAWOOの小崎洋さんが埼玉から移住しました。
もう1軒のかつて村長を務められた古民家「したさん」は、農地と山林を含む約2ヘクタールの広大な里山フィールドを個人の所有ではなくみんなのコモンズ/共有財産とするため一般社団法人小さな地球を設立し、賛同者と共同購入することにしました。
そこはカフェ、ショップ、宿泊所、ワーケーション、研修、リトリート、シェフインレジデンス、ギャラリー、森のようちえん、どぶろく加工所等々、多様な活用ができる里山文化複合施設です。
人と人、人と自然、都会と田舎をつなぎ、暮らしと社会に地球の循環を表現する「小さな地球」プロジェクトが始まりました。
そのきっかけになったのが、今回の茅葺き再生なのです。
このプロジェクトにすぐ手を上げてくれた人が建築家アトリエ・ワン/東京工業大学教授の塚本由晴さんでした。
「東工大塚本研究室として全面的に協力します。是非、一緒にやりましょう」
そして、神戸の茅葺き職人「くさかんむり」の相良育弥さんも手を上げてくれました。「茅」をテーマにシンポジウム「資源的人会議」を開催するため登壇者として釜沼集落へ来てくれた相良さんは、棚田のある里山風景を見てこう言いました。
「これは農民藝術ですね。」
「僕はこの活動全体をいのちの彫刻と呼んでいます。ここへ来て開口一番、農民藝術と言った人は育弥さんが初めてです。」
僕