はじめに・ご挨拶
2010年 私は5000万の赤字だった工場を5年の歳月をかけて、赤字を解消する事が出来ました。
私は、2006年から2014年の約8年間2つの工場の工場長をしていました。
工場長になる前に初めてその工場の決算書の数字を見た時、なんと売上げが2億円に対して月次損益がマイナス5000万でした。そんな事もあり当時の工場長が失踪するという事件まで発生していました。
当時の工場の状況はかなり深刻でした。生産すれば大半が不良品、顧客の納期が間に合わない、もちろん顧客からのクレームはもの凄い状態で、社員も疲労困窮の状態で、社員もが10人程度しかいないにも係わらず、過度な残業をさせ、派遣社員も300人と異常な状態が続いていました。
当時私は技術者として中国の工場に1年ほど出向していたのですが、プロジェクトが終了した事もあり、当時の上司の指示で日本に呼び戻され、工場の不具合対策をするようにと指示があり、ここから工場の改善に関わる事になりました。
技術者としての工場改善
工場のもちろん製品を中心にしたものになりますが、治工具をつくり治したり、工程での条件を変えたりと、一言では表現出来ない内容ですが、3ヶ月で嵐のような状態は鎮静化する事ができました。そして雇っていた派遣社員も10名程度まで抑える事ができるようになっていきました。
ただ、大火事が鎮静化しても、工場の問題はまだ燻っている状態でした。その後工場専任の技術担当として、工場に席を置くことになりました。
技術者から経営者への転身
技術者として、現場工程の改善や良品率の向上などを継続的に実施はしていましたが、工場の赤字解消に繋がって行きませんでした。何処に力を入れてよいか試行錯誤をしていました。
そんなときに転機が訪れました。それは、当時の上司である工場長の急死でした。それによって私が後任の工場長になる事となったのです。工場として係わる範囲が一気に広がったのです。もちろん当時経営については素人です。経理数字の読み方さえ判らない状態でした。
そして時間はかかりましたが過去の実績を読み解いて判った事は工程の改善だけしても、黒字にする事が出来ないという事が判明しました。そして大半の原因が事務所側(管理)にあるということが判ってきたのです。
工場経営に導入したTOC
工場全体の問題を解決するために、何処に真の原因があるのかを知りたかった。最短距離での改善をしたかった。そのため必要なものがありました。それは製品毎の実際の原価でした。どの製品がどの位の原価で実際作られているのかを知りたかったのです。
そこで導入したのが、TOC(Theory of concentration)でした。日本語の直訳では制約理論と呼ばれているもので、一般的には思考のプロセスと呼ばれるものです。2001年発売のエリアフゴールドラット著の「ゴール」で紹介されていた手法で、工場の再生には最適な方法と以前から思っていました。
ただ、TOCを導入するためには、かなり投資費用がかかる事で、若干アレンジを加えた形で、導入する事になっていきました。私がつかったのは、手順書と日報の運用方法の見直しでした。
工場経営者だったら絶対に知りたい商品毎の原価把握
商社みたいな仕事であれば、仕入れと売りだけで判断できますが、製造工場の場合は複数の素材が組み合わさったり、無形の材料(塗料や樹脂ペレット)などを様々なリソース(設備や人員)を使って加工したりするため、実際の原価分析をする事はかなり難しいと思います。
TOCの仕組み