すればするほど実感しました。
たとえば、「この厚さでこの材質の金属のこの部分が焚火の熱で どのくらい変形するかしないか」
実験をしてみないと分かりません。
しかし、経験とスキルのある職人は完成までのアプローチが早いです。
「その厚さの その素材をその大きさで切って曲げるとこのくらい設計との誤差が出る」
「同じ鉄でもこの種類の鉄より、その種類の鉄の方が熱に強いし錆びにくい」
簡単な例しか出せませんが、職人の経験から実験しなくてもパッと判断ができることもあり、自社製品の開発をしていると完成までの工数は大幅に短縮できますし、会社として50年以上蓄積してきたノウハウや職人が積み上げてきた大変貴重な技術があります。
町工場が衰退する中、もしそんな職人たちが働く場所がなくなり、職人たちがいなくなってしまったら、同じ品質のものをつくるのに、時間もお金も今までよりかかるようになりモノの価格は上がり、技術継承もされず、品質は落ち、2度とつくることができない製品も出てくるでしょう。町工場は日本の産業を支える技術・ノウハウを持っています。
どの業界でも共通して言えることですが「プロの仕事は格好いい」ですし、製造企業のほとんどを占める町工場がなくなれば、一番困るのは消費者です。
だからこそ、従業員20名弱の町工場でもこんなことができる!と全国の町工場を勇気づけられるような挑戦を私はしたいのです。
弊社は元々100%BtoBで受託生産を行っている町工場でした。
2020年の2月くらいからコロナの影響を受け、売上げが半減した月もありました。
何か打開策はないかと考えていたある日の朝、NYでのクラウドファンディングの取組みがテレビで放送されていました。
そのプロジェクトは抗菌性のある銅や真鍮(しんちゅう)でドアオープナーを作る開発費を募ったもので、開始3時間で50万円が集まったというのです。
自社の技術を活かし、コロナ禍で世の中に貢献できるものがつくれる。
これだ!と思い、すぐにドアオープナーのラフ画を描き、設計担当者に相談しました。
その日のうちに試作品ができ、デザイン等改良を何度か行い、真鍮(しんちゅう)製のドアオープナー『タッチレスハンド』ができあがりました。
これが弊社で販売するはじめての自社製品となりました。
自社の販売サイトを開設しましたら徐々に購入いただく方が増えてきました。
販売サイト内のレビューには「デザインが可愛い」「発送が迅速」「つくりがしっかりしている」など嬉しいお言葉をたくさんいただきました。
社員の趣味や興味を活かしたアイディア製品もいくつか出しています。
たとえば猫好きの社員のアイディアでペット用の冷却シート「ねこの寝床」を開発し販売してみました。
オーダーメイドで名前を入れられる仕様で、こちらも「愛着が湧く」とお客様に喜んでいただけました。
自分のアイディアや工夫で作り上げた製品がお客様に喜んでいただけると本当に嬉しいです。
BtoBのみで受託生産していた弊社がBtoCをはじめたことでお客様の声を直接聞くことができ、ものづくりのやりがいが大きくなることに気付きました。
自社製品の販売事業はまだまだ売上げでいうと全体の1%にも満たないですが、喜んでいただけるお客様がいて、製造する作り手も笑顔になれる。そんな連鎖をもっともっと増やしていきたいと思っています。
目指すは、毎日朝礼で「〇〇さんの開発した製品が今日は◇個注文が入りました」と嬉しさいっぱいに一日をスタートさせることです。
今回