しれません。異世界転生の原型となったVRMMOの仲間だと。
その通りです。
異世界転生は現代から妖精が暮らすファンタジー世界に、VRMMOは近未来から仮想世界に行く物語と異なりますが、『太陽神の巫女-AmaterasuCard-』もこれらの二つと同じ系統に属しています。
しかし、『太陽神の巫女-AmaterasuCard-』は成人向けです。正確には古典的な小説を求める人に向けて書かれています。
数行読むだけで、この小説が若い主人公の豊かな語りではなく、構成と描写による伝統的な小説であることに気がつくはずです。
『太陽神の巫女-AmaterasuCard-』は異世界転生やVRMMOの仲間ではありますが、ライトノベルの仲間ではないのです。
ですから、『太陽神の巫女-AmaterasuCard-』はJ・R・Rトールキンの『指輪物語』のような小説が好きな読者に向いているでしょう。
あるいは異世界転生に飽きてきたものの、それでも異世界転生やVRMMOが好きな読者に向いているかもしれません。
そして、もう一点。この小説は娯楽のみを目的とはしておらず、ブロンテ姉妹などのロマン主義文学と同じ文学的な問題意識で書かれています。
宗教や物語が私たちの人生に与える危険、それこそが『太陽神の巫女-AmaterasuCard-』が扱う中心的なテーマなのです。
私が『太陽神の巫女-AmaterasuCard-』を書籍化したいのは、宗教や物語が、そして私たちが自然と前提としている日本の歴史が、私たちの人生にどのように関わっているのかを一人でも多くの方にもう一度考えていただきたいからです。
21世紀、現代の日本にはさまざまな人々が住んでいます。
勤勉な人もいれば、遊ぶのが好きな人もいて、小説を読むのが好きな人もいれば科学と歴史に興味を持つ人もいます。
敬虔な仏教徒もいれば、宗教が嫌いな人もいます。
簡素な表現を求める人もいれば、多機能な家電製品を好む人もいます。
神道を日本の国民道徳だと信じる人もいて、それに疑いの目を向ける人もいます。
さまざまな人がいて、さまざまな価値観があり、さまざまな文化があり、日本人や日本文化を一括りにすることはできません。
日本人らしさなどないのです。
しかし、一点だけ、すべての日本人が共有する「民族の記憶」もあると思います。
この民族の記憶を思い出していただくことが、『太陽神の巫女-AmaterasuCard-』を書籍化することで実現したいことであり、そして執筆した理由です。
憲法九条や日米同盟など、日本には不思議なところたくさんがあります。
古文や漢文などは社会で使われない知識でありながら今でも日本の重要な教養でありますが、同時に日本人は新しい技術を重んじるところもあり、また過激な宗教活動に否定的です。
『太陽神の巫女-AmaterasuCard-』を読めば、日本が今の姿になってしまった理由を思い出すきっかけになるかもしれません。
日本には良いところも悪いところもあります。変なところもあります。
しかし、良いところも悪いところも、変なところも、すべてを含めて日本という一つの大きな物語から生まれていると私は考えます。
その大きな物語を私たち日本人の全員が知っています。家族や友人たちと語り合うことのない心に秘めた物語です。
それを『太陽神の巫女-AmaterasuCard-』を読み、もう一度思いだして見つめてみましょう。
科学と宗教の果てしない戦いとその結末を知るためにも。
『太陽神の巫女-Ama