役割を担わせください。
仏教書を中心に出版活動を続けてきた株式会社サンガは、それまで日本ではあまり刊行されてこなかったテーラワーダ仏教(上座仏教・初期仏教)の書籍を数多く刊行し、仏教の魅力を幅広い読者の方々にお届けしてきました。
特に、テーラワーダ仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老の著書を日本で一番多く刊行してきました。その数は約120タイトルに及びます。
また、年に数回刊行してきた仏教総合誌『サンガジャパン』では、仏教を同時代のテーマに呼応させて、広がりのあるコンテンツを作ってきました。
海外の動向もいち早く捉え、日本の医療分野でも注目されはじめてきた「マインドフルネス」を日本社会に浸透させる役割を担うこともできました。
さらに、仏教という枠を超えて、人々が心を豊かにするための書籍やコンテンツを生み出してきました。
近年はオンラインセミナーにも力を入れていました。例えば、2020年8月には〔ウィズコロナ時代のメタスキルを育てる「マインドフルネス」&「EQ」セミナー〕を開催し、マインドフルネスの研究者・熊野宏昭先生をはじめとする講師の方々から、充実の講義をいただきました。
各分野の第一人者を講師に迎えた連続オンラインセミナーも大好評でした。
スマナサーラ長老の存在を、日本人に広く知らしめた人物が、サンガ創業者の島影透氏です。
島影透氏は、もともとは地元仙台で「しまかげアイスクリーム」を経営していましたが、「仏教を人々に伝えたい」という強い志をもって株式会社サンガを1999年7月22日に創業しました。
そして、スマナサーラ長老のたくさんの著書を世に送り出してきました。
2009年には、サンガ主催でスマナサーラ長老との「インド仏蹟の旅」を実現しました。スマナサーラ長老の横で嬉しそうに微笑む島影透氏。(撮影:相田晴美)
『怒らないこと』(アルボムッレ・スマナサーラ)、『呼吸の本』(谷川俊太郎/加藤俊朗)『禅マインド ビギナーズ・マインド』(鈴木俊隆) 、『EQ2.0』(トラヴィス・ブラットベリー/ジーン・グリーブス)などのベストセラーにも恵まれ、一見、順調にも見えた出版活動でしたが、長期的な出版不況の影響もあり、負債は大きく積み重なっていました。
そして、2020年7月20日。
その日は通常の月曜日で、島影透氏は仙台本社にいました。そして13時から、東京の社員とオンラインでつなぎ、社内会議を始めました。
その直後です。島影は突然意識を失い、椅子の背もたれに寄りかかるように倒れたのです。
仙台本社でそばにいた私・佐藤由樹が、ただならぬ異変に気づきましたので、すぐに駆け寄り、急いで救急車を呼び、そして懸命に人工呼吸と心臓マッサージを続けました。
何とか島影社長の命をつなぎたい。ここで死なせてしまってはだめだ―— 。
私は、島影社長に息を吹き込みながら、必死で叫んでいました。
「社長!しっかりしてください! 戻ってきてください!社長!」
しばらくして救急車が到着し、救急隊員によって病院に搬送されました。
しかし、懸命の治療もかなわず、翌日、2020年7月21日に、島影透氏は息を引き取りました。
その後、島影透氏の奥様が代表取締役に就任し、新体制の下、社員一丸となって業務に取り組んできましたが、これまで積み重なってきた負債の負担は大きく、2021年1月に代表取締役が営業停止を判断されました。
志半ばで、サンガは活動を停止することになったのです。
株式会社サンガの破産の知らせが広がる中、皆様から想いのこもった言葉をたくさんいた