これまでの10年を踏まえての初チャレンジとなります。長文になっていますが、最後までお読みいただけると幸いです。
栃木県の端っこ(北東部)の那珂川町というところで、木の家具や木のクラフトを製作しているヒロクラフトの廣田充伸・美千香と申します。
自然豊かな所で子育てしたいという気持もあり、15年程前に東京から家族で移り住みました。
山と川に囲まれた台地の中に、美味しいお米が育つ粘土質の田んぼや、野菜や蕎麦・麦の畑が連なり、15軒ほどが暮らすのんびり穏やかで、里山の風景が美しい地域です。
工房の裏山に入ると、今でも米作りをされている「山の棚田」があって、毎年、米の収穫が終わった後にその棚田をお借りして馬頭琴の屋外コンサートを主催してきました。
なぜ「山の棚田」で? なぜ馬頭琴? なぜ開催するの?
初めての方には、多くの疑問が沸く事と思います。
その「山の棚田」は、山の谷あいに細長く形作られた小さな田んぼで(この辺りでは「段々田んぼ」と呼ばれています)、お隣に住むシゲルさんが先代から受け継いでお一人で米作りをされています。
田んぼに降りると、周囲はぐるりと山に囲まれており、沢の音、虫や蛙や鳥の声、木々のさざめきや、心地よい風・・・そんな自然の気配が全身で感じられる場所で、ここに住み始めた私たち家族のお気に入りの場所となり、いつしか、工房を訪れるお客様にも紹介したい場所となっていきました。
そんな時、馬頭琴奏者・美炎(みほ)さんのコンサートに参加した知人のブログが目に留まり、この地域は町村合併前は「馬頭町」だった事から「馬頭で馬頭琴やったら面白いですね」と、冗談のつもりでコメントしてしまったのが事の始まりでした。
人の為ならどこへでも出向き人と人を繋げる事に喜びを感じるその知人は冗談と受け流さず、あれよあれよという間に、馬頭琴奏者・美炎さんと交渉し、こちらで試奏して頂く事が決まってしまったのです。
演奏していただくとしたら、私達の気持としては「山の棚田」がイチ押しの場所でしたが、モンゴルの大草原や屋外で弾いた事のある美炎さんも「棚田」での演奏経験はなく、どんな所なのかと半信半疑でやって来られました。
ところが、棚田の石舞台状の所で演奏してみると「音は散ってしまうのではなく、細く長く山の斜面に沿って昇っていくようだった」と美炎さん自身もびっくりするくらいの良い響きで、「コンサートを主催する」なんて事には全くの素人だった私達もその音色につき動かされるように「覚悟」を決めたのは、この地域でも震災の影響が色濃かった2011年春の事でした。
それから、首都圏からの応援隊や地域の方々に支えられながら、毎年10月に棚田での馬頭琴コンサートを開催してきました。
「山の棚田」ではスタッフを含めて200人前後の方々が毎年、美炎さんの演奏を楽しんできました。私達の住む梅平地区の方々も会場準備や当日のスタッフとしても参加して下さるようになり、だんだん地域の恒例行事の様なものとして定着してきました。
お客様には集落の外れにある大きな駐車場(休日でお休みの工場敷地)から棚田までの約1Kmを、里の風景を楽しみながら歩いて頂き、さらに、里の風景を守っている地域の人々の事もお伝えしたいと考え、棚田へ向かう山の仕事道に周辺の自然や里の暮らしの写真を展示し、駐車場から棚田までの地域全体を大きなコンサート会場として捉えて活用してきました。
毎年、雨天の際には屋内会場で開催できるよう準備もしてきましたが、第7回を除いて雨は降らず、運良くすべて棚田(屋外)で開催す