生活者の中には生活保護の受給を拒否する方がいると述べましたが、その理由には下記のようなものがあります。複数の理由が当てはまる人も多くいらっしゃいます。もしご興味がありましたら・・・と義平の論文『日本におけるハウジングファーストの展開に関する考察』もご一読いただけますと幸いです。(見守り型宿泊所ありあけについても当該リンクよりお読みください。)
◆ 生活保護を申請すると家族への扶養照会がある
「家族にはこの状態を知られたくない」「田舎はすぐ周りに知られるし生保なんてとんでもない」
◆ 住所を定めることを避けたい
「(多重債務など)借金があるので受けられない」「DVを受けている」
◆ 生活保護に対する負のイメージ
「生保を受けるなんて恥ずかしい」「できる限り自分で働いて食っていきたい」「年金が受け取れるようになるまで野宿で頑張る」
◆ 福祉事務所での負の体験
生活保護の申請に来た方に「水際作戦」として追い返すことが奨励されていた時期がありました。特にその頃に『屈辱的な対応を受けた』という思いから「行政の世話になるものか!」と強く思っている人たちも多くいます。
⇒ 長く話していると実は生活保護を希望していることもあります。その場合は申請同行し、福祉事務所側との円滑なコミュニケーションができるようにして生活保護に繋げます。宿泊先が決まっているので皆さんが嫌がる更生施設や貧困ビジネスの施設に送られることもありません。生活保護受給中も就労継続は可能であり、借金がある人は自己破産の手続きに繋げます。
◆ 貧困ビジネスの囲い込み型宿泊所での負の体験
支給される一ヶ月分の生活保護費は14万円程度ですが、入居費、食費、水道光熱費、テレビ代等としてその殆どが徴収され、手元に残るのは1~2万円のみというところが殆どです。真摯に障がいのある方のお世話をしている支援団体もある一方、営利目的の団体が多数あり、上から下目線の命令的指示で当事者の選択の余地のない“支配に近い支援”によって尊厳を傷つけられてきた人たちがいます。
⇒ 信頼関係を繋ぐことで再度生活保護に繋げ、より自然に自主的に生活できる簡易宿泊所で受入れ、将来的にアパート自立に繋げます。
◆ 精神的な問題
精神的な症状があることで住まいの定着が難しい方たちがいます。また隔離病棟で入院した体験がある人は二度と病院に行きたくないと言う方も多くいます。
⇒ さりげない会話から精神保健福祉士や看護師による面談に繋げ、医療扶助単給での通院に繋げられるよう働きかけます。よりしっかりとした信頼関係が構築できれば生活保護を申請して3月以降の通院に繋げます。
◆ 自由を求めて山谷へ
上記とも一部重なりますが、貧困ビジネスからの自由、隔離病棟や更生施設からの自由、その他ブラック企業による搾取的な長時間労働、家族に対する責任と負担といった、義務・責任感等縛りの多い日本型社会から逃れて自由を求めて山谷にいらっしゃる方たちがいます。同居人とのいさかいで住む場所を失ったり、元受刑者で就労が難しく社会的に孤立してしまったりで山谷に辿りつく方たちもいます。
国際的に見ても、日本の生活保護制度は生活全般の支援に繋がる貴重な社会制度です。多くの方が生活保護制度によって救われています。
ただ、生活保護への差別的な見方であったり、家族への扶養照会があったり、収入の分を(勤労控除分を除き)後日差し引かれることで受給者の就労意欲の妨げになっていたり、一律での支給が基本であるため貧困ビジネスによる囲い込み型施設が横行