はじめまして、北海道釧路市にあるフレンチレストラン『イオマンテ』と申します。
そして、オーナーシェフであります私、舟崎一馬(ふなざきかずま)が今回のプロジェクトを担当いたします。よろしくお願いいたします。
『夜の街関連』と言われてしまった商い同士
私のレストランは北海道釧路市にある「末広町」という場所にあります。ここは東京でいえば歌舞伎町、札幌でいえばススキノのような、いわゆる繁華街になります。
2020年に始まったコロナ禍において『夜の街』と表現された時から今日まで、業種を問わずフレンチレストラン、そして私たちと取引のある酒屋のような問屋さんも苦境に立たされています。
シェフの心を震わせた酒屋さんの言葉
当店と取引をしている酒屋さんは私たちと同じ「末広町」に店舗があり、その取引先のほとんどは、繁華街にあるスナックや居酒屋などの飲食店。
そのため、私たち飲食店と同じく(テイクアウトなどの逃げ道がないので、もっと大変かもしれない)、このコロナ禍で経営はかなり苦しくなっているはずでした。
そんな中、酒屋さんの言葉に私は心を振るわせられることになりました。
=2021年3月のある日、数人の飲食店経営者と酒屋さんでの会話。=
飲食店経営者A 『大変なんだから、一般のお客さんに対して小売をはじめればいいじゃない?飲食店で飲まない分、自宅飲み需要があるから業販用(一般小売されていない)の珍しいお酒とか売れると思うよ。』
酒屋社長 『それはしないよ。』
飲食店経営者B 『なぜ?』
酒屋社長 『うちは長年、この末広という繁華街で、スナックや居酒屋、いま一番つらい思いをしている飲食店さんたちを相手に商売をさせてもらってきた。ずっと一緒にやってきた皆さんが困っているのに、自分だけ「小売やります」なんて、そんなことはできない。』
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じつはこの酒屋さんは、最初の緊急事態宣言が発令された2020年5月頃に、私たち取引先の飲食店に「見舞金」と「手紙」を配りながら、一軒一軒周ってくれていました。
その手紙の一部分を抜粋します。
=このような状況の中で、長年に渡りお世話になっておりますお得意様に対し、本当にわずかで恐縮ではございますが、当店が今できる応援をさせていただきたく存じます。
まちの酒屋として皆様と共に従業員一同頑張って参りますので、今後ともよろしくお願い申し上げます=
まだこの時は、こんなにコロナ禍が長引き、歓楽街から人が居なくなることが1年以上も続くなんて予想していませんでした。
困った時はお互いさま
2021年の4月、釧路市は市内のすべての飲食店に1軒20万円の給付金を支給すると発表しました。
私のお店も赤字状態が続いている中で、わずかな支援でも嬉しかったのは確かです。しかし、私たちと取引がある問屋さん達も同じように苦境に立たされていることを考えると、複雑な思いがありました。
1年前、先に「出来るだけの応援」をしてくれた酒屋さんに、こんどはこちらが「出来るだけの応援」をしようと思います。
釧路市からの支援金を全額を使い、その酒屋さんから20万円分の地元の日本酒を買いました。
「20万円」額は少なすぎて、私のお店の赤字にも足りず、もちろん酒屋さんの助けにもほとんどならないかもしれません。
でも、なんとかこの「20万円」の恩恵を、出来る限り多く、地域の皆さんに広げるために。そんな使い方を考えてのプロジェクトです。
今回のお酒は、釧路の地酒「福司(ふくつかさ)酒造」の上等純米酒。プリンに使う牛乳も卵も同