はじめに
私は長年、学校現場においてDVや性暴力の予防教育に関する出前講座を実施してきました。
そこで伝えていたことは、「よりよい人間関係作りを通して、誰も暴力の被害者にも加害者にもならないでほしい」というメッセージでした。そして、講座を重ねていくうちに、被害者に向けた「被害に遭わない様に気を付けましょう」というメッセージより「加害者にならないようにまず知識から知ってほしい」または「加害者を作らない社会の在り方を提案」することに重要性を感じるようになってきました。
そして、DVやデートDVの被害者に軽度の知的な課題を抱えている女性の割合が高く、予防の必要性を感じていました。もちろん、男女とも被害者にも加害者にもならないで欲しいのですが、加害者にならない教育を通して、被害者にならない啓発を強化できるような内容に仕上げたいと考えています。
同時に、保護者への啓発プログラムも作成したいと考えています。彼(彼女)らがいじめや暴力の被害、性被害に遭うことが多い現実があり、身近な人が加害者になることもあり、保護者たちがどのように子どもを守れば良いか悩む姿に直面してきたからです。
特別支援学校の子どもたちが「性」をきちんと理解して自分の中に落とし込んでいくためには、学校での教育だけでなく、保護者と共に地域で如何に子どもたちを守るのかという視点は欠かせません。
私たちは、このプロジェクトで、特別支援学校の子ども向けの予防教育プログラム(子ども向け・保護者け)を開発し、子どもたちが暴力・性被害の当事者にならない社会の実現に挑みます。
解決したい社会課題
軽度の知的な課題を抱える子は、周囲からその状態が見えにくく、人を疑うことを知らない子どもたちも多いと思います。加害者はそれに付けこみ被害を与えます。
「同意」となるよう狡猾に子どもを誘導するのです。
ここで考えるべきこととして、「子どもたちが悪いわけではない」ということ。
予防プログラムの制作・実施を通して、子どもたちだけではなく、保護者並びに周囲の大人たちに、そのようなことが起きない社会の在り方を問いたいと考えています。
DV、デートDVよりも性暴力被害は、なかなか周囲に相談できない状況が調査からもわかります。加害の問題を明らかにすることで、悪いのは加害者であり、被害者が恥を感じることなく声を上げやすい社会になってほしいと思います。「加害者に加害をしない・させない」という啓発並びに、我々大人が、地域において予防意識の高い機運を高めることで、加害者が加害をできない社会を作りたいと考えています。
出典:内閣府 男女共同参画局HP 男女共同参画白書 令和2年版 I-6-10図 強制性交等・強制わいせつ認知件数の推移
課題と向き合うきっかけや経緯
これまでの活動の経験から、特別支援学校を卒業した後、社会人になって間もなく結婚、出産している女性たちが少なくないこと、そして、その後DVを受けているケースが少なくないことがわかりました。
そのような女性は経済的自立が難しく、子どもを育てながらひとり親になることを選ぶことも難しいと思います。
できれば性や結婚に関心を持ち始める前、なるべく早い段階で性教育や暴力予防教育を受けて欲しいと考えています。
そして何より、「加害をしない」というメッセージの強い内容のプログラムにしたいと思います。
出典:内閣府 男女共同参画局HP 男女共同参画白書 平成29年版 I-7-11図 異性から無理やりに性交された被害にあった時期の推移(女性)
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