歳を超えてヨガを教えるおばあちゃん
暮らしを目一杯楽しもうとする達人たちと出会い、いわきという土地が、まったく違った魅力を放っていることに気づかされました。(それぞれ記事のリンクがついていますので、ぜひクリックして記事も読んでみてください)
igokuでは、そのつど、地域で得られた驚きや感動、学びを伝えてきました。等身大の言葉やデザインが評価され、2019年に開催されたグッドデザイン賞で金賞に選んでいただきました。授章式では、数ある受賞者の中から5団体しか選ばれないファイナリストに残り、日本を代表するブランド企業のプレゼンターとともにigokuの思いを発表することができました。私たちのデザイン力ではなくて、地域の総合力を評価していただけたのではないかと感じています。
90歳を超えてヨガを教えるおばあちゃん。笑い声のひびく、最高の取材でしたグッドデザイン賞の最終プレゼンの模様
いごくの制作を通じて得られたこと
そんなこんなで足掛け丸5年、igokuに関わってきて感じることがあります。自分たちがやってきたことは、地域と自分を接続する、想像以上の力があるのではないか。その魅力やノウハウ、理念のようなものを改めて言語化し、誰もが手に取りやすい「本」の形にすることができたら、皆さんの暮らしを、プロジェクトを、おもしろおかしくするお手伝いができるのではないか、ということです。
ここ最近、igokuに関する講演やトークショーなどに呼んでいただくことが増えました。そこで色々な話をすると、想像以上に皆さんが面白がってくれて、ためになった、勉強になったと言ってくださるのです。たしかに、その時々で得られた驚きや感動は「記事」にはしてきましたが、記事に書ききれなかったものもたくさんあり、それが、皆さんに刺さったのかもしれません。
例えば、デザイナーの高木が手がけるデザインで言えば、一般的な企業のロゴをデザインするときと、igokuのイベントのチラシを作るときでは、気をつかう部分が異なります。いごくは、そもそも行政の案件ですから大きく逸脱することはできません。けれど、「死や老いをポジティブに思考する」というコンセプトを伝えるためには、ギリギリセーフ? アウト? を狙わなくちゃいけません。
そのギリギリのラインをどう見極めていくのか。ステークホルダーとどう対話し、その痕跡をいかにデザインに落とし込んでいくのか。わたしたちが直面してきたことは「地域とデザイン」の領域だけでなく、「課題とデザイン」、「行政との協働におけるデザイン」など様々な切り口があるように感じます。
デザイナーの高木による、「いごくフェス」のバナーいごく編集長だった猪狩は、市の職員でありながらメディアの編集長であり、そこをなんとかのディレクターでもあります。私が市職員の立場で「行政とデザイン」という観点でお話をしたら、これからの地域・行政・課題解決というものを考えるうえで、大きなヒントになるかもしれません。
ライター兼リサーチャーの江尻は、いわきの「ヤッチキ」という伝承芸能についてリサーチをしています。リサーチしていると、その土地の高齢者と出会い、対話し、酒を飲んだり畑仕事を手伝ったりして信頼を深めていく必要があります。その人個人の歴史に迫ろうという江尻のリサーチは、民俗学的でありながら福祉的側面を帯びてしまう。そんなことを書いてもらったら、これは面白い話になるはずです。
市内の文化系イベントで「ヤッチキ」に関するレクチャーを行う江尻
同じくライターの小松理虔は、『新復興論』という著作で