ました。各地の取材では現地の方々に支えられ、多くの素晴らしい景色と出会うことができました。五島列島の雄大な自然や歴史的・文化的な建造物、生活の音が聞こえてきそうな路地等、多岐にわたる対象を描いています。締め切りがないライフワークですので、その絵をどこまで描いて終わらせるのかを山本二三自身が決めるという難しさもあり、大変ながらも充実した時間だったそうです。
実は最初は出身地の五島市だけを描くつもりで開始したのですが、「他の島も描くべきでは」という周囲の意見があり、途中から加えました。取材のスケジュールや予算の都合で結果的に五島市が多くなってしまいましたが、できる限り様々な島へ行き、観光名所にこだわらず、山本二三という画家の眼で描画地を選んでいきました。
山本二三のアトリエにて。現在67歳。
五島百景の絵で五島列島をご紹介します
「高浜と頓泊」(五島百景より)(C)山本二三
福江島の高浜は真っ白い砂浜とマリンブルーに澄みきっている。日本の渚100選にも選ばれました。青年の頃、山本二三はここへ泳ぎにきました。帰りがけ、母からもらった大切な腕時計を砂浜に忘れてきたことに気づきました。探しに戻ってみると潮が満ちており、元いた場所は海の中でした。腕時計を失くしてしまったことは、ずっと母に言えないままになってしまいました。
「奈良尾神社のアコウの樹」(五島百景より)(C)山本二三
中通島の奈良尾神社のアコウの樹は樹齢650年を超え高さ25m、幹周り12mで日本一の大きさで国の天然記念物です。根っこが二股に分かれ、この下をくぐって神社へ繋がる参道を歩くことができます。地元の人々に愛されるこのアコウの樹は、下をくぐる人々を長い間見守ってきたことでしょう。
「旧野首教会」(五島百景より)(C)山本二三
今は無人となってしまった野崎島の旧野首教会は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」として世界遺産に認定されています。数々の教会を設計した名建築家、鉄川与助の仕事です。こちらは野首・舟森集落に住んでいた17世帯の潜伏キリシタン達が、貧しい生活をしながらも作り出した資金で建設を依頼した教会。禁教時代に長く厳しい弾圧を受けながらも守り抜いた教会はその重厚な荘厳さと五島の歴史を今に伝えています。
「城ヶ岳」(五島百景より)(C)山本二三
城ヶ岳は宇久島の中心にあり、島内で一番高い場所です。頂上の展望所からは東に平戸島、北に生月・大島・壱岐・対馬が見える素晴らしい眺望です。五島列島は海底火山の噴火でできた島々で、穏やかな入江とゴツゴツとした岩肌、高低差のあるダイナミックな景色が魅力的です。
「五島百景 五島列島展」とは?
日本初、五島列島全体を美術館に見立てて、様々な島に「五島百景」の絵を展示するプロジェクトです。福江島の山本二三美術館の他、様々な島の公民館等の施設を使用する予定です。離島に住む人々にとって船や飛行機で美術館へ出かけるのは大変なことで、高齢者や子どもであればなおさらです。そんな方々にも「五島百景」をご覧いただきたく、絵の方から島々へ伺います。現時点では以下の島に展示の予定です。
※どの島にどの絵が展示されるかは現在、検討中です。展示会場のセキュリティーや作品管理の状況により、原画及び高精細複製画による展示を検討しています。
時:2021年4/29(木)〜6/13(日)(予定)
※新型コロナウイルス感染症の状況を見て、場合によっては本展が延期となることもあるかもしれませんが、時期を変えて必ず実施いたします。延期となった場合も