◆君の作品は伝わらない。良くわからない。
稚拙で最低な脚本は時として、お客さんを奈落の底へと落とします。
得てして、映像で表現出来る事はセリフでは無く映像で表現するべきなのです。
しかし、私が分かり易いと思う表現でもお客さんにしてみたら分かりにくい表現の可能性も有ります。
100%人の気持ちを理解出来る人なんてこの世にはいませんが、しっかりと社会では人と人とが顔を合わせ生活をして居ります。
それは、相手を理解しようとする気持ちがあるからです。では、どうすればお客さんが映画の登場人物を理解してくれるのでしょうか。
私の意見ですが、それは現実的なキャラクターである事です。現実的とはキャラクターが現実の世界に於いて存在できるかどうかです。例えば、畑違いではありますがジブリの「千と千尋の神隠し」で両親が神のお供え物を食い荒らすシーンにおいて、千尋は両親に帰ろうと叫びます。
不穏な空気感において先に進もうとする者それを止める者、特段珍しいシーンでは有りませんが宮崎駿は千尋に自分の服を引っ張りながら帰ろうと言わせる選択をしました。何処にでもある有り触れたシーンですがそれは一転し、幼い少女が一生懸命自分の意見を大人達に通そうとするシーンに変貌しました。お客さんは千尋を応援したくなります。そこから、お客さんは千尋を理解しようとして感情移入し映画が終わる頃には千尋を名残惜しく思うのです。
と言う様にキャラクターを丁寧に描く事によってお客さんは物語を誤解しながらもキャラクターの動きを見て点と点を自分なりの線として繋げて行き理解するのです。
私が心掛けた事はキャラクターに命を吹き込めるかどうかです。可能な限り丁寧に描きました。
◆演技が高校の学芸会レベル。酷いね。
もしかしたら、脚本が良くてもキャストの表現力が足りず表現しきれないと言った事も有るかも知れません。この問題は、制作費が少ない自主映画ではよく有る事です。
しかし、こう言った問題にあぐらを書いていたらいい作品を作り出す事は不可能です。
ロベール・ブレッソン監督のキャスティングは殆ど素人を起用して居ります。とりわけ「スリ」と言う映画では実在するスリ師を起用し、演技では引き出せないリアルさを演出しました。
物語自体ファンタジーですが、私はこの方法に影響を受け主要キャストに対し、作品の中でキャスト自身が生きる事が出来る様に幼少時代から今までの生い立ちをインタビューしました。
「Believe It」はフィクションで有りノンフィクションでも有ります。キャストさんのリアルが演出出来れば幸いです。
◆社会的なメッセージ。
ディズニーの脚本は何人もの脚本家によってアイディアを出し合い最初に出た案を切り捨てます。理由は最初に出たアイディアは誰でも思いつくからです。しかし、残念ながら映画120年の歴史の中でアイディアは出尽くしています。それでも、お客さんの心を釘付けにするのはメッセージが廃れないからです。つまり、普遍性がある事です。1990年代に響いて2000年代に響かないものが2020年代にはもしかしたら響くかも知れません。レイチャールズの言葉を借りるなら「目が黒いうちは何が当たるかなんて誰にも分からない。」何とも皮肉の効いた言葉ですね。
物事を目で見るのではなく己の審美眼で捉えろと言う事でしょうか。つまり、五体で感じる事。
「Believe It」のテーマは「流行」です。
SNSの普及は人となりを昔よりも近い存在にしたと思います。