奈良県の中西部に位置する香芝市には「五位堂鋳物(ごいどういもの)」という鋳物業の伝統が息づいてきました。その発祥は古く、美原町 光田氏所蔵の書物(鋳物師国郡人別名簿)によると、私たち五位堂工業は奈良時代に東大寺の大仏様造立の指揮をとった鋳物師の流れを汲むとされており、現在まで伝統を守っている唯一の会社です。しかし今、この「五位堂鋳物」の存在はほとんど知られていません。
東大寺の大仏様(奈良)
享保15年(西暦1730年)の古文書
また近年は、身の回りのものがプラスチックなどの軽くてやわらかい素材に置き換わり、【鉄】に直接触れる機会は減ってきました。
私たちは、工業製品で培った技術力をもとに、日常で使える【鉄】製品をつくって多くの人に届け、五位堂鋳物の伝統を次の時代へつなぎたいという願いがあります。
かつて堅牢無比な鍋や農具として流通していた「五位堂ブランド」を今の時代に即した形で再興し、地域産業を盛り上げます。
「鉄のこと、鋳物のこと、いっしょに楽しみながら応援してくれる仲間を募集します。」
〇鋳物でいいもの
鋳物とは、高温で溶かした金属を型に流し込み、冷やしたあとに型から取り出してつくる製品です。
液体の金属が流れ込みますので、自由な形状の製品をつくり出すことが可能です。私たちは普段、船舶エンジン部品などの工業製品をつくっていますが、全く形の違う日用品をつくる場合も根本的な製造方法は何も変わりません。
私たちはこの、形による制限が少ないという特長を生かし、生活で使えるさまざまな製品を鋳物でつくり出すことに挑戦します。
〇材料のリサイクルを通じた持続可能な社会に向けて
リサイクル鉄を溶かす様子です
さらに、鋳物業では金属をリサイクルすることが可能です。良品とならなかった製品や、バリなどの製品にならない部分は炉の中で再び溶かされ、次の製品へと新たに生まれ変わります。
そのリサイクル率はなんと70%にも達します。
この特長を活かせば、使わなくなった製品をお客様から回収して新製品へと「再生」することも可能です。いずれはそうした再生可能な製品の流通システムの構築も視野に入れています。鋳物だからこそできるSDGs(持続可能な開発目標)への貢献に取り組んでまいります。
鋳物の特長を生かしたアイテム
「鋳物でいいもの」をお届けします。
溶かした鉄を型に流し込む「注湯」の様子です
〇朝廷に仕えた鋳物師集団
はじめまして、五位堂(ごいどう)工業株式会社と申します。私たちは奈良の地で古くから鋳物業を営んできました。
かつて鋳物をつくる職人のことを鋳物師(いもじ)と呼びました。私たちは奈良県香芝市の五位堂に本社を構える五位堂鋳物師の一員です。
鋳物師国郡人別名簿によると、奈良時代に東大寺の大仏様をつくった鋳物師の流れを汲むとされ、中世から近世にかけては朝廷の公用を務めた御鋳物師の一家です。また、1614年、のちに豊臣家滅亡の端緒となった「国家安康」の銘で知られる方広寺の梵鐘鋳造には脇棟梁の一人として参加した記録があります。
近世は関西一円の梵鐘を主に製造しましたが、明治以降になると農具や鍋釜などの日用品をつくり、その堅牢無比な製品が「五位堂ブランド」として流通しました。
方広寺の梵鐘(国家安康の鐘)
かつてのブランドロゴマーク
しかし今、五位堂鋳物は文書、製品、生産用具などの文化財が数多く残る貴重な地域産業でありながら、南部鉄器や高岡銅器などと比べあまりその存在を知られていないのが現状です。
それは、時代のニーズ