海と森、故郷の魅力を次世代へ伝えるカフェを守りたい。

海と森、故郷の魅力を次世代へ伝えるカフェを守りたい。
いわき市にある「交流スペースなっくる」。平成27年に休館となった国民宿舎を活用し、地域の人々に憩いと交流の場を創ること目的に、令和元年10月から体に優しい発酵食カフェをオープンしました。海と森に囲まれた豊かな環境を広く知ってもらい、守り、次世代へ繋ぐためのチャレンジです。

▶︎【交流の場】に生まれ変わった国民宿舎

初めまして。交流スペース勿来(なっくる)の運営をしている「特定非営利活動法人勿来まちづくりサポートセンター」代表の舘 敬です。

交流スペース勿来(なっくる)のある「勿来県立自然公園」には、奥羽三関の一つ「勿来の関」など史跡・名所があります。
勿来の関は、太平洋に突出した竜宮岬や鵜ノ子岬など、高台から臨む雄大な景色の素晴らしい場所です。

屋上から望む太平洋。この日はちょっと見えなかったのですが、船もよく見えます。同じ自然公園内にある寝殿造(しんでんづくり)の「吹風殿」

名だたる歌人にも詠まれ、歴史あるこの地にあった「国民宿舎 勿来の関荘」は、東日本大震災では被災した浪江町民の皆さんの避難所としての役割も果たしました。
しかし、昭和53年開設の施設は老朽化も激しく利用者が減少したことを理由に、平成26年に休館となりました。

 震災直後から「いわき市勿来地区災害ボランティアセンター」を運営し、その後、復興に携わってきた私たち勿来まちづくりサポートセンターでは、原発事故や津波による被災者と地域の人々との繋がりの場を作りたいと考え、いわき市より宿舎を借り受けて令和元年10月より「交流スペースなっくる」をスタートさせました。

まずは、食から元気を!と、健康を意識したメニュー(豚バラ麹漬けや自家製ぬか漬け、乳酸菌入り特別栽培米など)発酵食品をふんだんに取り入れたカフェをオープンして、今日まで県内外を問わず、多くの方に足を運んでいただいてきました。

公園を散策するのに便利な、レンタサイクルもあります。
▶︎これまでのチェンジと、コロナ禍へのチャレンジ。

 カフェで提供する野菜には、私が農家であることを生かして就労継続支援B型・就労移行支援の多機能事業所と協力し、農業の担い手不足を福祉からの解消を目指す「農福連携拠点づくり事業」で作った野菜を使っています。

スタッフやボランティアの方たちDIYにより再生

上記の農園以外にも、カフェのテラスに有機肥料を使った菜園があり、四季折々の摘みたての新鮮な野菜をサラダで提供しています。

具沢山の豚汁とお新香も、人気です。

自家製の米粉を使ったシフォンケーキ

そして周辺に広がる豊かな自然を多くの人に伝えたいと、震災後より福島の復興に力を貸してくれている筑波大学や芝浦工大の大学生たちと協力して「トレッキングコース」も整備しました。

途中、新型コロナウイルスの影響を受け中断するなど大変な状況の中ではありましたが、若い学生さんたちの協力のおかげもあり、今年8月に2年越しでトレイルマップも完成しました。

大学生たちは現在も、地域の子ども達が自身で作る大型遊具のワークショップに協力してくれています。

緑の豊かさを感じるトレイルコース

そうした積み重ねで、徐々に笑顔の集まる場となってきた「勿来(なっくる)」ですが、近年の新型コロナウイルスの影響は非常に大きく、苦しい状況にあります。

これまではカフェを中心として地域に根差し、繋がりを築くための活動を行ってきました。

しかしそのカフェが、度重なる感染防止のための自粛や観光客の減少により売り上げが激減。

このままでは、カフェの存続自体が困難な状況です。

震災や原発事故による住民の断絶や風評被害などいくつもの困難の中、やっと芽吹いたこの場所での繋がりが枯れてしまいかねないのです。

私たちも、懸命に考えました。

そして、こんな時でも来てくれる方のためにも、もっと便利に快適に、そして安心して過ごせる【憩いのカフェ