はじめに・ご挨拶
出口も未だ見えない長引くコロナ禍において、昨年におきましては多数のかたがたにご支援を頂き大いに助けていただきました。この場をお借りして、改めまして皆様の温かいお気持ちに心より感謝申し上げます。
神戸旬膳K’s Kitchenでは、ご提供してまいりましたお料理のほとんどが天然の活け魚や採れたての新鮮野菜や、神戸牛を紀州備長炭で焼き上げたステーキなど、出来立てのタイミングにその美味しさが最もピークを迎えるような繊細なお料理ばかりでした。
基本は全てお店に来ていただくお客様に全力でお料理とおもてなしに努めることであることは言うまでもありませんが、せめて行動制限を受けることが日常化している昨今、おうちごはんの機会が急増し、外食の機会が激減する中で、私たち食のプロができることは何だろうか?と考えました時、お店でないとご提供できなかった美味しさのほんの一部であったとしても、ご家庭でより日常の食卓が豊かになるアイテムをご提供できないだろうかと考えるに至りました。
そして実は私にとって最も難しいことが、この美味しさを皆様のご家庭で再現していただくことでした。
しかし世の中の状況が変化し、常識が逆転する昨今にあっては、工夫と決断を以て何かしなくてはならないと考え、まずは主菜と言うよりも、「テイスト」という部分でご家庭の美食に貢献度のもっとも高いものの方が良いと考え、お店でしかご提供してこなかった生合わせのドレッシングを、何とか食品加工専門企業の担当者と検討と試作と検証を重ねて、常温で流通させることができて、なおかつお店で召し上がっていただける美味しさを極力損なわないという針の隙間を縫うような商品の開発に挑みました。
「たかが、何をドレッシングごときで大げさなことを言ってるんだ!」とお思いになられた方も少なくないかもしれません。
しかし、お店では作ってまもなく、しかも製作者であるシェフが管理し、目の前でチェックした上で作りたてのお料理を目の前のお客様にお出しして召し上がっていただくことと、一般にどこで誰によってどんな風に扱われるのかもわからない不安も多い状況下において、一般家庭で主に主婦の方が調理される際にご使用いただいて、且つお店に来られた方が召し上がられた際にも、お店で召し上がっていただく味わいと比較して遜色ない味わいやクオリティーを再現することと言うのは、全く似て非なる事であり、違う技術とスキルが要求されることでありました。
そこで私は、食品加工専門企業の社長様・担当営業マンの方とひざ詰めで話を詰めながら、私の極めたいこだわりを徹底的にお伝えしました。
その上で、先方の社長様の外販商品作りの難しさと問題点と、前例について詳しくお話を伺うにつれ、この乖離したものをどこですり合わせるべきかを徹底的に話し合った結果、ようやく「これなら神戸旬膳K’s Kitchenのオーナーシェフとして決して恥ずかしくない品質をお届けできる!」と確信を持つに至りました。
ところが、またここですぐに新たな問題が発生しました。
それは流通させ得る商品という事は、できれば常温流通を可能にして、且つ賞味期限も6カ月をクリアしなくては、ロスや不要なコストばかりがかさんでしまい、プロジェクトとして成立しないという点でした。
これも幾度もの話し合いにより、パッキングした「神戸ワインドレッシング」をできる限り低温で長時間殺菌を施すことで、安全性と品質維持の両立を目指した結果、何とか納得いく結果を導き出すことができました。
こうして、品質・味わい・保存性・