捕獲しても500頭ぐらいは増え続けてしまうのです。何もしないでいると益々被害が深刻になります。
増えすぎた鹿は縄張り争いをし、その争いに負けた鹿が別の生息地を探します。どんどん人間の生活圏に鹿が入ってきました。昨今では街中でも野生動物を見ることも増えてきています。
電車と動物との衝突事故も増加しています。JR西日本広島支社管内の在来線でも年間800件以上発生しています。特にシカは鉄分を補給するため線路をなめる習性があるとされ、夜間や早朝を中心に線路内への立ち入りが後を絶ちません。
最適な生息数に近づけるため狩猟し、そしていただいた命に感謝し有効利用することが人としての責務となっています。
東広島ジビエセンターでは鹿や、猪を罠で捕獲します。
「止め刺し」の技術にこだわり、鉛玉による肉の痛みを全く無い状態で獲物を確保します。センターに持ち帰り精肉。肉はジビエ肉として流通いたします。真面目に自然と向き合う猟師が創る、本物のジビエ肉が出来上がります。
清潔な処理施設内そのジビエ肉として処理する過程で出る皮。その皮も有効利用しようという思いから始まったのが「広島ジビエレザープロジェクト」です。
すべてのものを有効利用し循環型の社会へ近づきたいという思いで取り組んでいます。
野生からファッションへ革の鞣し工場
食肉加工された後の皮は冷凍保存され、鎌倉時代からの革の産地である兵庫県龍野市のタンナー(皮を鞣し革にする工場)に渡されます。
そこで昔ながらのタンニン鞣し(なめし)という方法で鞣しを行います。
植物のタンニン(渋)を使い鞣し(なめし)ていく方法です。
牛革などと違い大きさも状態も違う革をなめすのには非常に高度な技術と手間がかかります。手間と時間をかけて丁寧に鞣されるため出来上がるまで2か月程度かかります。
化学薬品で行う鞣し法のほうが仕上がりも早く、経費も抑えることができます。
それでも私たちは昔ながらの植物タンニン鞣しにこだわりました。
昔ながらの植物タンニン鞣しで鞣された革はもともとの鹿の表情が現れるため個性のある革に仕上がります。
大地の温もりを感じ取れる革に仕上げたかったのです。
出来上がったジビエ鹿革
「皮が革になった瞬間です」
革業界では、生の状態のものを皮。鞣されて使えるようになったものを革と記載します。
柔らかく手触りの良い鹿の革は「革のカシミア」ともいわれています。
柔らかくとても手触りの良い革です。
飼育された牛や豚の革とは違い野生の鹿の革は個性がとても強く1枚1枚違う状態のものが出来上がります。
製品にするにはそれぞれの革の個性を見極めながらの製作が必要です。
そのため利用する革職人が少なく市場でもあまり出回っていません。
広島ジビエレザーキャメル
広島ジビエレザーダークグリーン
同じキャメル(上の写真左)でも狩猟した時期や、雄雌、子供か大人か、食べ物や住む地域により出来上がってくる革は違います。
一つとして同じものは作れない。
自然界はすべてナンバー1ではなくオンリー1なのです。
その違いも一期一会。大地の温もりを感じ取ってください。
広島ジビエレザーの表面の様子生きていた時の傷もあります。強度に問題がない傷はジビエレザーのあかしとして使用します。
現在東広島ジビエセンターから革部門が独立した「VARIED」がジビエ革を専門に製造販売を展開しています。
今後は東広島ジビエセンターでとれた鹿の革をはじめ、猪の革なども「VARIED」とともに協力して積極的に使用していく予定です。