します。
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(1種類のカニだけを常に提供し続ける難しさ)
繰り返しお話している通り、私が日々向き合っている食材は、一種類。
わたりがにだけです。
冬から春にかけてはオレンジ色に輝く内子が美味しいメスがに、夏から秋にかけては濃厚な味わいが特徴のお造りも美味しいオスがにと、季節に応じて異なる味を楽しめますが、一方で、他のメイン食材がないので、仕入れがなければ、頂戴した予約もお断りしないといけない上、お店も休まないといけないという、かなりリスクのある経営が求められます。
さらに言うと、水槽では、常時100匹程度のカニのストックは欲しいところです。
しかしながら、ここのところ、地元の大阪湾での水揚げが激減しているほか、日本各地においては、腕利きの漁師さんの相次ぐ引退により、わたりがには海中にいるのに獲れないという状況があります。
各地でわたりがにが注目されないのは、なぜか。
大阪では、わたりがにと言えば古くから岸和田だんじり祭りの振る舞い食材として用いられたこともあり、馴染みのある方も多いのですが、日本の地方に広げてみてみると「わたりがになんて、食べない」、「パスタのカニ」、「身がしずらい」と、その美味しい魅力が知られていないのが現実です。
そして、追い討ちするように、お店側の視点では、このわたりがには、とても保管しづらいのです。魚屋さんから仕入れてから、水温・塩分濃度・透明度・水槽内の水の流れに対して、どれか一つのリズムが崩れると、弱りやすくなり、すぐに死んでしまうのです。
死んでしまうと身の酸化がすぐにはじまり腐敗し、次第に耳が曲がるほどの悪臭が襲ってきます。
ですので、私は、朝・昼・夜の1日3回、休みの日でも欠かさず、一匹づつかにを水槽から取り出して別の水槽に入れ替える動作で、かにの鮮度を確かめます。
手間も時間もかかりますが、このアナログな鮮度管理をしていないと、料理に使えないので、必死です。
どれだけ鮮度チェックをしても、それでもカニは死んでしまいます。
以下の図は、仕入れたカニを50匹として、水槽内で弱っていく割合を示した図表です。
すでに、仕入れた直後で、海からの輸送を重ねた揺れやストレスによって、だいたい1割程度は、弱ってしまいます。
仕入れてからたった1日で、こんなに弱ってしまうんです。
あるお客様は、私に、こう言いました。
「予約が入った日だけカニを仕入るべき。活かしておくなんて、お金を捨てているだけと違う?」。
また、お世話になっている魚屋さんからも、「昔と今とでは、海の顔色が違う。毎日大漁はもう難しい。ワタリ1本ではなくて、もう1本違う食材も今後はメインで立てていくべきではないか。それくらいしんどいことと、お宅は向き合っている。お店の経営にも関わることなので、そろそろわたりがに一筋の考え方を辞めてみては?」。
どれも衝撃のコメントでした。
ただ、私にとっては、もう”わたりがにクレイジー”の領域にまで達したので、わたりがにと生きる想いはこれまでもこれからも変わらないのです。
そして、予約が入った日だけカニを仕入れるなんて、できません。その日にカニが獲れる保証がどこにもないからです。
また、漁に出たからといって大漁とも限りません。最悪は、荒天になると漁に出れませんから。
料理のアイデアや工夫ももちろん大切にしてますし