べる!」と言いますが、親や教師が介入して相手が譲った場合、仲直りができないことが多いです。いじめに苦しむ子は、「相手が謝ってくれさえすれば、私は救われる!」という子が多いのですが、大人が入って、相手の子が謝った場合、いじめ問題が解決することは、少ないです。
選択理論では、子どもの相談を受けた時、脳の働き方に沿って「どんなことがあったの?」「これから、どうなりたいの?」「じゃあ、どうする?」と温かく支援的に質問します。いじめや不登校に悩む子どもの「夢や願い」を傾聴していくことは問題の解決に大いに役立ちます。
「自分はどうなりたいのか」と考え、夢や願いを描く習慣は、将来の問題に備えるだけでなく問題の予防にもなるでしょう。
また、子どもに「魔法の声かけ」をしていくことは、子どもが自ら人生を楽しくたくましく歩む支援となります。
【選択理論との出会い】
私は35年間、小中学校の保健室を預かってきました。登校時間になると様々な症状を表す子、学校生活で悩みや問題を抱えている子と毎日のように向き合ってきました。社会の変化が複雑化し加速化するとともに、子どもの悩みも深刻化してきたように感じます。ユニセフの子どもの意識調査によると、「自分には価値がある」「自分には良いところがある」という質問に対してイエスと答えた子どもは日本は最下位です。日本は諸外国と比べれば恵まれた面が多いのに、このような状態では、せっかく日本に生まれたのに、豊かさを享受できず幸せ感を感じにくくなってしまうようです。
私自身も教師として、自己肯定感の低い子どもが多いことを実感し、どんな対応をすれば、自分の存在に価値を見出し、自分の良い面に気付いてもらえるか迷い悩み、いろいろな心理学やカウンセリングを学ぶようになりました。
その中で、2000年、偶然、知人に誘われて参加した「選択理論心理学」の講座で、「落伍者なき学校」(グラッサー・クオリティ・スクール)が実在することを知りました。いえ、知ってしまったのです。選択理論をベースにした、生徒全員が成績も良く、問題行動が全くない学校が、米国にはたくさん実在しています。また、精神病院や刑務所の厚生教育としても大きな成果を上げて世界的に有名になっています。
【選択理論とは】
米国の精神科医、ウイリアム・グラッサー博士は患者と共に苦しむ中で、「問題を抱えている人は皆、身近で大切な人との人間関係が悪い」ことに気づきました。人の脳が効果的に働くためには、「身近で大切な人との良い人間関係」が必要であることを発見したのです。そこで、博士は、「脳の働き方」と「人間関係を築く7つの習慣」を選択理論としてまとめました。
選択理論では、人間が、幸せを感じながら生きていくためには、「愛・所属」、「力(承認)」、「自由」、「楽しみ」、「生存」といった生まれもった5つの欲求を、自ら満たす必要があるというのです。欲求の全てを満たすには、身近で重要な人との人間関係を良くすることが必要で、批判したりガミガミ言ったりする等の人間関係を壊す習慣を止め、傾聴したり支援したりする等の人間関係を築く習慣を勧めています。
選択理論を実践した結果、精神病院(1965年)や刑務所、学校(1990年)で教え、劇的な成果を上げました。現在、多くの国々に広がっています。脳の性質にそっているので、国籍、人種、性別、年齢に関係なく、幼児から大人まで、安心して実践することができます。
選択理論の効果と実践のイメージ動画(勝野瑛斗さん作)
脳の働き方をシンプルに理論化し、脳を良い状態で機能さ