はじめに・ご挨拶
この度は本プロジェクトをご覧いただき、誠にありがとうございます。
静岡県袋井市でお茶を生産している「安間製茶」代表の安間孝介と申します。
弊社と同市の瓦工事店「株式会社瓦粋」は、瓦用の土から特殊な焼成方法で作った瓦製急須「粋月(すいげつ)」を2年かけて開発し、今年から国内外での販売を開始する予定になっていました。しかし新型コロナウイルスの影響によって行き先はすべて無くなり、せっかく製作した粋月の在庫だけが残る状態となってしまいました。
粋月のコンセプトは、「機能を追求した新しい価値の提供」です。
お茶も瓦も、日本で古来より親しまれてきた重要な「文化」ですが、近年では選択肢の多様化などによって、お茶・瓦ともに衰退が続いているのが現状です。そんな二つの文化が融合することで新しく創り出された特別な急須は、双方の未来を切り開く存在であると同時に、皆様の生活に今まで無かった新しい潤いを与えてくれるものと期待しております。
「一生もの」のアイテムとして、この急須をぜひお手元に置いてください。
急須はお茶を味わうために必要な道具ですが、急須の素材によってお茶の味が変化することはご存じですか?
ガラス製の急須と比較して陶器製の急須は、お茶の苦みのもとであるカテキン・カフェインを吸着する効果が高く、お茶の味をまろやかにしてくれるのです。この陶器製急須の効果をさらに追究し、極限まで苦み成分を吸着させて旨み・甘みだけを抽出する機能性を実現したのが、瓦製急須「粋月(すいげつ)」です。
茶文化の基礎をつくりあげた茶聖「千利休」。
彼が聚楽第の瓦職人に「聚楽焼(じゅらくやき)」という茶器を作らせたことが楽茶碗の始まりと言われています。粋月は、お茶と瓦の歴史と最新の研究が融合した「現代の聚楽焼」だと言えるでしょう。
①特殊な瓦素材を使用することで活性炭と同様の効果を持続させ、お茶やお酒の旨み・甘みを向上。
②極上の旨みが特徴の希少な高級茶「白葉茶(はくようちゃ)」と組み合わせて日本茶の旨み・甘みの極致を味わえる。
③他には無いデザイン・コンセプトで、味覚だけに留まらず五感で愉しむことができる。
※「2020グッドデザインしずおか」金賞受賞
お茶の苦みのもとであるカフェイン・カテキンには、健康に良い効果もある半面で旨み・甘みのもとであるアミノ酸「テアニン」の味や機能性を阻害するという性質があります。
陶器の急須でお茶を淹れると旨み・甘みが際立つのは、陶器がカフェイン・カテキンをわずかに吸着することで、相対的にテアニンの割合が大きくなるためです。
安間製茶が研究・製造している白葉茶(はくようちゃ)はテアニンをはじめとしたアミノ酸の含有量が非常に多く、「旨みのかたまり」と言われる味が特徴のお茶です。
カフェイン・カテキンを大幅に吸着する素材で急須を作れば、ただでさえ特徴的な白葉茶の味がさらに大きく向上するのではないか。それが粋月を開発するきっかけとなりました。
急須の素材に「瓦」を選んだ理由。それは瓦こそが、素材そのものに炭素を染み込ませて他にはない機能を実現できる焼き物だったからです。
「いぶし瓦」という銀色に光る瓦をご存じでしょうか?
この瓦の特徴は、炭素の膜をまとうことで銀色に輝いて見えることです。活性炭にはカフェイン・カテキンを大幅に吸着する効果があるという論文(※)から、炭素を多く含む瓦を使用すれば、活性炭同様の効果が期待できると考えられました。
ただし、食器として使用すると炭素膜は短期間で剥がれてしまうため