要介護になったら、美容室にいけない!?
初めまして。
プロジェクトリーダーの小野弘樹です。
ケアマネージャーとして働く介護の専門家です。
私たちは「要介護高齢者」を美容室に連れて行ける環境を作りたい!という想いをもって集まりました。
突然ですが皆さんは、介護になったら美容室にいけなくなる現実をご存知でしょうか?
「え・・・?連れて行けばいいんじゃないの?」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かにそうなのです。連れていければいいんです。ではどこの美容室に・・・?どうやって・・・?
要介護高齢者は、たくさんの制約を受け入れて生活をしている方がとても多いのです。体力が低下することに加え、認知症などの疾患を抱えていらっしゃる方もいます。やりたいことがあっても一人ではできない、外出するのも一人では困難。では家族やヘルパーさんがずっと付き添っていれるのかというとそれも難しい。
たとえ付き添いが可能となっても、美容室側の設備やスキルの問題もあります。車いす対応をしてくださる美容室は昔に比べずいぶん多くなりましたが、要介護者に対する知識はどうでしょう?認知症の方に対する接客スキルは・・・?
連れていけないのには様々な課題があるのです。要介護高齢者の方を美容室へお連れする、その環境をつくるために今回この「ケアサロンプロジェクト」を立ち上げました。
「美容室にいきたいなぁ・・・」
きっかけは普段からケアマネージャーとして担当させていただいている方の、この一言でした。この言葉にどれだけの想いが込められていたのでしょう。
長年介護の現場に携わってきて、最も心を痛めていることが「要介護者の気持ち」です。
要介護になることで「誰かに迷惑をかけてしまう・・・」「外出先でも迷惑かける・・・」「周りの視線が気になる」そう思う方が少なくありません。
要介護になることで、自宅や介護施設にこもりがちになり、人との会話が減り、寂しい気持ちをもって毎日を過ごす。そうして心のバランスを崩してしまう方もまた少なくないのです。身体的だけでなく、精神的にも外出できなくる。それが何よりも苦しいのです。
「美容室にいきたい——。」
そう私に伝えてくれたこの方も鬱病を患っていました。
車いすの生活、自分では動くことは難しく、部屋に引きこもりがちで他者とのコミュニケーションもほとんどない状態でした。
いつも口にするのは、「死にたい」「つらい」などの悲観的な言葉ばかり。しかし、ある時ふと「髪切りりたいなぁ・・・美容室に行きたいなぁ」ぽつりと言いました。めずらしく「何かしたい」という希望を口にしたのです。それを実現することができれば、何か変わるきっかけになるのではと思いました。
「じゃあ、美容室に行きましょう。何とかしてみます。」
「こんな状態で行けるところなんてないから、無理しなくていいよ」
こんな会話をした後、現在のプロジェクトメンバーに助けてもらい、結果として、美容室に連れて行くことができました。本人もそのご家族にも大変喜んでいただき、そしてなんと、その後3回も美容室に通うことが出来ています。
実際にお連れしてわかった「課題」と「解決策」
結果としては通うことができたものの、その道のりはいくつものハードルを乗り越えなければなりませんでした。
①要介護者の方でも通える美容室探し
実際にいくつか美容室をさがしてみましたが、自分達の身近には要介護状態になってしまった方々が気軽に行くことが出来る美容室は、環境として「全く無い」のです。
要介護高齢者の方が美容室に来られても、対処が出来ず、迷惑になってしまうお店が多かったのです。身体的な介助を要する場合はリスクもあります。高齢者の気持ちに寄り添い、快く受け入れてくれる気持ちのある美容室を探す必要がありました。
今回、このプロジェクトに名乗りを上げてくれのが、仙台市太白区 富沢に店舗を構える「ハナイ ヘア デザイン」さんです。普段から介護施設などに出張で美容を提供している、優しい美容師さんです。
②自宅から美容室への移動問題
自宅から、美容室に行く手段の確保が必要なのですが、家族自らが車椅子を車に積んで、何とか介助で車に乗ってもらというのはかなりの重労働。これも問題としてあがりました。
美容室までの送迎は、車椅子や寝たきりの人でも対応可能な「介護専門タクシー」の株式会社 福興舎【ふっこう福祉タクシー】さんが名乗りを上げてくれました。
信頼の送迎技術とノウハウで、お客様を安心してご自宅からお店までの送迎を致します。
③美容室内での「身体介護」の問題
身体介護には有資格者が必要になります。トイレの問題や店内移動の問題、シャンプー台への乗り移り、カット中の体調管理や見守り等、知識のある付き添い者が必要になるケースもあります。
美容室内は、ずっと有資格者の介護者が付き添います。店内で必要な介助はすべて行うので、安心して綺麗に鳴ることができます。介護者は、介護タクシーの伊藤さんがそのまま介助者として付き添いを行います。
④美容室内の環境整備
美容室に行った後、安心・安全にカットやカラーをするために、店内環境を作ることも重要であることがわかりました。美容室の多くは当然健常者を想定しています。車椅子の方でもお店の環境を使用できるように、福祉用具を使って店内を整備する必要があるのです。段差の解消のためのスロープ・つかまるための手すり・移動用の車椅子など、状態に合わせた福祉用具が必要となります。
実際にお店に来る前に、専門家がしっかりと状態についてヒアリングを行い、体の状態に合わせてその都度福祉用具を利用します。
安全・安心して美容室にて過ごすことができるように、介護対応にお店をカスタマイズ致します。
⑤周りの目線への配慮
車いすで美容室に来ていると、やっぱり周りの目線が気になる・・・というご意見を頂き、美容室内に個別ブースをご用意致しました。
周りを気にせず、リラックスして美容室を楽しんで頂ける環境を作ることが出来ています。
⑥専門家による状態確認と共有
安全にカット・カラーを受けるためには、事前に要介護者の状態・美容室の設備を確認・共有する必要があります。事前にヒアリングをしてどんな状態の方中を把握し、情報を共有してておくことも必要であるということもわかりました。
「美容室にいく」ということは、健常者である私達には日常のことであっても、要介護者の方にとっては非日常なのです。とてもじゃありませんが、これら一連の流れを調整をするのは、ヘルパーさんやご家族の方には負担が大きすぎます。でもそんな非日常だからこそ何とか叶えてあげたい・もっと多くの要介護者を美容室に連れていってあげたい、と強く思いました。
このプロジェクトで実現したいこと
それはたったひとつ。
「キレイ」を通して笑顔になってもらいたい。
要介護高齢者の方々は、外出する機会がとても限られています。ずっと同じ環境で、刺激のない生活を送っている方も多くいらっしゃいます。そんな方に対して、「美容室に行ける」ことは良い意味で非日常な体験になり、心に潤いを取り戻すことがで