今だからこそ、対話をあきらめてはいけない。コロナ禍でオープンした「対話の森」
ダイアログ・ミュージアム「対話の森」は、多くの方々からご支援をいただき、昨年8月に東京・浜松町にある「アトレ竹芝」内にオープンしました。
ミュージアムの展示物はモノではなく、人と人との関わりの中にあるダイアログ(対話)です。
ここではエンターテイメントを通し、あらゆる人が対等に出会い共に遊び、対話をすることができます。そのファシリテーター役となるのはアテンド(案内人)と言われる視覚障害者、聴覚障害者、後期高齢者です。
◆「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)」
視覚障害者のアテンドに案内され、ゲストは真っ暗闇の中で探検し遊び、そして対話を楽しみます。
◆「ダイアログ・イン・サイレンス(DIS)」
聴覚障害者のアテンドに案内され、ゲストは音のない静けさの中、表情とボディーランゲージを駆使しながら遊び、対話を楽しみます。
◆「ダイアログ・ウィズ・タイム(DWT)」
後期高齢者のアテンドに案内され、ゲストは高齢者の世界を訪れ、年を重ねる豊かさ、その中で培った知恵を知ることができます。世代を超えて遊び対話をする時間は生きることの喜びまで知ることができます。
いずれもエンターテイメントですが、私たちの活動は「ソーシャルエンターテイメント」と言われ、体験を通して社会をより豊かにするソーシャルグッドの役割を担っています。
「対話の森」のオープンに向けては2019年にクラウドファンディングで支援を募り、900名を超える方々にご支援いただきました。いただいたご支援で視聴覚障害者のアテンドも募集し雇用。世界で3か国目のダイアログ・ミュージアムが日本についにオープンができる!―そう思ったときに、新型コロナウイルスの感染拡大が始まりました。
一時はオープンをあきらめることも考えましたが、私たちは今こそ「対話の森」を開くことを決めました。なぜなら、
誰もが不安で苦しい今だからこそ、分断せずに関わりを持つための「対話」の場が必要だ
と思ったからです。そうして工夫を重ね、新たな挑戦をしました。
社会が求めているエンターテイメントを。1.5メートルの距離と、マスクをつけたなかでの楽しい「おしゃべり」
真っ暗闇の中を体験するDIDはどうしても3密に思われがちです。そして、日常もまるで暗闇のような状態にある今、必要なのは暗闇ではなく「光」ではないか―そう考え、DIDの暗闇に明かりを灯し「ダイアログ・イン・ザ・ライト」という世界初のプログラムを開催しました。もちろん、1.5メートルの距離をとって遊べるプログラムです。
人はいま、明るく安全の中で「リアルな関わり」を求めている。困難な「今」を照らす希望の光を暗闇に灯してプログラムに挑戦しました。
DISも、マスク着用を必須としプログラムを開催しました。音声言語は使わないため飛沫の心配もないのですが、あえてマスク着用にしたのは、聴覚障害者の言葉があったからでした。
「コロナ禍では、世の中から笑顔が消えたように思う」
マスク着用が当たり前となった今、私たちはしらぬ間に表情をさぼっているようです。そんな世の中に一つでも多く笑顔を咲かせようと、「マスクからはみでるほどの笑顔」をテーマに、ニューノーマルに合わせ「言葉の壁を超えた対話」を実現しました。
コロナ禍での「マスクからはみ出るほどの笑顔」をキャッチコピーにした「ダイアログ・イン・サイレンス」
■FNNプライムオンライン「マスクの下の表情をさぼらないで!」聴覚障がい者が訴える緊急事態宣言の