出会えず、2年。
最後に行きついたのは、なんと地元の「信濃町産の小麦粉」でした。
これには本当にびっくり。
散々森を探し回ったあげく家にいた、幸せの青い鳥のようです。
信濃町産の小麦粉は、旨味も非常に強くコクがあり、
大地の香りがするので、一口食べればすぐに信濃町産の小麦粉だと分かります。
信濃町は水も空気も綺麗で美味しく、黒姫山の辺りは火山灰と腐葉土による栄養豊富な黒土です。
環境の良さこそが、小麦粉の味に直結しているのだと気づきました。
ただし、
この小麦粉には一つ問題が…。
しぼんだり、ふくらまなかったり、焼くのが非常に難しいということ。
イーストを減らしてみたり、水を加減を変えたり、
発酵の時間を見極めたり、何度も何度も失敗しました。
納得いくパンが焼けた時には、最初のトライから1年が経っていました。
今でも、気温や湿度など、季節や天気により微調整が必要で、
パンと対話しながら焼いてます。
気になって、まわりのパン屋さんに聞いてみたところ、
他のパン屋さんは「あの小麦粉なんか変。色も白くないし」と言い、早々にあきらめたそうです。
値段も普通の小麦粉の5倍します。
なので、この町で、いや日本中で、
信濃町産の小麦粉で焼いたパンを売っているのは、私だけです。
「さらに美味しい食パンを作るために、食パンコンテスト優勝者の元へ」
次に、食パンの製法です。
究極の食パンを作るために、食パンコンテストで優勝した方の元へ行きました。
「とにかく日本一の食パンを食べてみたい」
「その人と自分のパンは何が違うのか知りたい」
という思いで行きました。
1ヶ月後の食パンの予約をとり、
実は自分もパン職人であることや「本当に美味しい食パンを作りたい」ということを告げると、
工房の中まで招き入れて下さり、30分ほどお話する機会を頂きました。
さらに、「次は朝の6時から作っているところを見学しても良い」と。
1ヶ月後、約束通り朝6時から伺うと「一緒にやってみますか?」と誘って下さり、そのままお昼過ぎまで一緒にパンを作りながら、レシピや作り方や材料、すべてを教えてくださいました。
日本一の食パンのレシピすべてを、です。
この教えていただいたレシピを元に、
更に何度も何度も納得のいくまで2年間、試行錯誤で研究しました。
そしてついに、パンの旨味を最大限に引き出すことに成功したのです。
この時すでに、パンづくりを始めて5年が経っていました。
「美味しさと幸せの追求」
私は「人を幸せにする」ためには、心も身体も元気になるパンが本物だと思ってます。
人は病気だと、幸せを感じることは難しいと思うからです。
風邪をひいて熱が出ているとき、
めまいがするとき、お腹が痛いとき、
何か心配事があるとき、
幸せを感じる余裕がなくなってしまいますよね。
私は遺伝で、生まれつき病弱です。
長らくそれで苦しんできましたが、
食事を改善することで、だいぶよくなってきました。
それが分かったからこそ、パンの素材や製法には、誰よりもこだわっています。
なので、原材料費も日本一高いのではないかと。
ですが、
食べものは、その人の身体を作るもの。
食べてくれる人の幸せを一番に考えて、
無添加・高栄養価のパンを焼いています。
「家族の笑顔を取り戻したい、でも1度に焼けるのは2本」
笑顔が消えてしまった両親やおじいちゃんおばあちゃんのために、
このパンを届けることで、少しでも食堂の売り上げの補填になれ