ること
松本市内には、当店を含めてたくさんの洋食店があります。
そのなかで、多くのお客様が私たちの店をお選びいただく理由は、2つあると考えています。
まずひとつは、ノスタルジックな空間の魅力。
歴史を積みかさねた建物だけが放つ雰囲気は、まるで別世界へ誘うかのよう。
いつ訪れても心地の良い空間がお客様を優しく包み込みます。
ふたつめは、食材へのこだわり。
当店は高級な食材を扱うわけではなく、むしろ、肉も野菜も、誰もがなじみのあるものばかりです。
しかし、だからこそ素材の目利きには格別のこだわりがあります。
地元でも珍しい安曇野三澤豚やHappy Village Farmから安定して仕入れることができるのも、素材に対してこだわりを持つ農家さんと「おきな堂」の信頼関係があるからこそ。
使用する野菜や食材は、作物や家畜の生命力と信州の風土を活かし、独自の信念を持って育てている尊敬する大切な生産者の仲間が手がけたものばかり。
そうした素材をありがたくいただき、コツコツと手間を惜しまずていねいに調理する。
それが、「おきな堂」の持ち味です。
店でお出ししているハヤシライスもカレーライスも、それから、オムライスもポークステーキも、すべて特別なメニューはありません。
当店オリジナルのデミグラスソースを使用したボルガライスも、流行に左右されない昔ながらの自家製プリンも、今のブームを取り入れたメニューはありません。
使っている材料も、特別なものは加えていませんし、地域で手に入れられる食材が多く、作り方もいたってシンプルです。
それでも、ひと口食べた瞬間、「懐かしいのに、どこか新しい」と、心を打つ料理はここでしか味わえないはず。
言葉では表現するのが難しい、感性にしみじみ染み渡る料理こそ、「おきな堂」の持ち味なのです。
時の流れが止まったような空間は、わざわざ松本を訪れる価値がある
おきな堂が店を構えるのは、文化と芸術の街、長野県松本市。
中心部を流れる女鳥羽川沿いに建ち、常に地元の人たちの憩いの場としてにぎわっています。
もともとは菓子店「翁堂」からスタートし、1933年に「翁堂喫茶部」として独立。
樹齢200年の木を通し柱とする木像3階建の店舗は、当時のままの趣きを残しています。
※「翁堂喫茶部」時代の外観
※現在の外観
1階には、モスグリーンの椅子と、所々剥げた赤いテーブルが印象的なフロア。
一日中、ジャズやクラシックが流れ、ゆったりとした雰囲気に包まれています。
2階は女鳥羽川や四柱神社を望み、四季折々の光景を楽しめます。
1階に比べてゆったりとしたダイニングの雰囲気で、いつもより時間をかけて食事を楽しみたいというシーンにはぴったりのフロアです。
時を経て2階と3階は改装を行いましたが、1階はほぼ創業当時のまま。
飴色の桜の木の壁や、壁や天井の造りも当時のまま使用しています。
そのように、創業当時の時代をいまだに感じられる雰囲気は、私たち「おきな堂」の財産。
先代、先々代に感謝しつつ、これから先も永遠に残していきたいと考えています。
最後に:このプロジェクトへの想い
改めまして、最後までお読みいただきありがとうございます。
「おきな堂」3代目の木内伸光です。
私の曾祖父や祖父が、「これからの時代は喫茶だ」と考え、昭和8年に菓子店「翁堂」から「翁堂喫茶部」として独立。
その予測はピタリと当たり「翁堂喫茶部」は洋食もある喫茶店として大いに賑わったそうです。
そして父の代に、屋号を現在の「おきな堂」に