リと客足が泊まり、私たちも危機感を募らせました。最初の緊急事態宣言がなされ、売り上げも昨年比90%以上の減少に。まったく先行きが見えない状況の中でどうやって経営を存続させていくか。宿という業態は打ち手も限られています。試行錯誤しながら、この空間をどのようにして活用できるかを、日々昼夜問わず考え続けていました。
ちょうどその頃、「都内ではネットカフェ難民が急増している」というニュースを、友人がSNS上でシェアしているのを見ました。ネットカフェは日雇い労働者や、帰る家のない人の仮住まいの場所として機能している側面があるのですが、1回目の緊急事態宣言を受け、24時間営業ができなくなったネットカフェから、そうした方々が追い出されてしまう状況が発生していたのです。
私も「札幌も他人事ではない」という気持ちでコメントを添えて、その記事をシェアしました。しかし、ワンクリックで済ませてしまうことへの居心地の悪さを感じ、具体的に行動を起こすべきだと考え「この別館をそういった人たちに使ってもらう為にはどうしたらよいだろうか」と考え始めました。
思い立ってすぐに「ホームレス 札幌 支援団体」といったキーワードで検索したところ、「北海道の労働と福祉を考える会」という1999年からホームレス支援を行なっている団体を見つけ、コンタクトを取りました。それをきっかけに、今なお様々な面でサポートを続けてくれている小川遼さんをはじめとした「札幌市ホームレス支援センターJOIN」の方々と出会いました。その結果、2020年5月より別館を用いて、3食付きのシェルターとしてスタートを切ることになりました。私たちにとって、ここが非常に大きな転機となりました。
様々な制度を活用し、今に至るまで合計80名を超える人たちの受け入れ支援を行ってきました。これらの取り組みは昨年、北海道新聞にも掲載していただきました。
コロナ以前はインバウンド需要が大きく、宿泊施設であるUNTAPPED HOSTELもその恩恵にあずかってきたと言えます。ただ一方で同時期に、札幌市の中心部は大きく風景が変わりつつありました。
大きな力で、空き地ができたらすぐに新たなホテルが建つ。古いものがどんどん取り壊されていく。街の中心部に地元の人がゆっくりできるスペースがなくなっていく。「このままではいかないだろうな」「どこかで破綻するのではないだろうか」という、行き先のわからないまま突進していくような、危うい雰囲気を感じていました。
そんな状況の中、今回のパンデミックは起こりました。
何故自分たちも苦しい時期に困窮者支援をしようと思ったのか、今もってその明確な理由の説明は難しいのですが、何となくそこにぼんやりと見える未来に賭けてみたいという想いがありました。未来というのはUNTAPPED HOSTELの未来のみならず、社会全体の未来です。それは希望と言い換えてもよいかもしれません。きれいごとのように聞こえてしまうかもしれませんが、絶望的な状況の中、この支援事業をきっかけに、自分たち自身の朧げな「こうあってほしい」という社会への希望にもつながる新たなドアに手をかけた感触があったのです。
この取り組みを通じて、この場所を逃げ場とする、10代から80代までの様々な異なる背景を持っている人たちと出会いました。日々会話を交わす中で、今一度「場所」を持っている私たちにできることはなんだろう、と想いを巡らせました。そこで出したひとつの答えは、受け入れ事業を一過性のアクションで終わらせることなく、「継続していこう」というもので