ビールのまち・札幌に、多彩な「リアルエール」を再び!クラフトビールの原点回帰

ビールのまち・札幌に、多彩な「リアルエール」を再び!クラフトビールの原点回帰
北海道札幌市は「ビールのまち」。日本のラガービールの故郷であり、今は数多くのブルワリー、ビアバーがあります。しかし「クラフトビールの原点」ともいえる「リアルエール」を提供するビアバーが途絶えて久しく経ちました。そこで当店でハンドポンプを導入しリアルエールをいつでも楽しめるようにします!

語には詳しくても、「リアルエール」とは聞いたことも飲んだこともない方が、実はいらっしゃるのではないかと思います。

「リアルエール」は、「クラフトビール」が定着する過程で2000年代に流行を見せたビールです。

1994年に勃興した「地ビール」は2000年ごろをピークとし、直後に「冬の時代」を迎えます。しかし「ベルギービール」やこの「リアルエール」が「冬の時代」を支え、多くのビール愛好家を小規模醸造所の魅力に繋ぎ続けました。

かつては、2003年より「東京リアルエールフェスティバル」というビアフェスもあり、通算10回も開催されていたほどだったのです(その後「ニッポン クラフトビア フェスティバル」に発展)。

そうした流れと小規模醸造所の頑張りが少しずつ実を結び、2010年ごろから「クラフトビール」という言葉が広まっていきました。

その一方で、「リアルエール」を提供するお店は少しずつ減っていきました。東京・大阪にはまだお店が残っていますが、後に触れるように、この札幌では現在1軒のみとなってしまいました。2021年の現在、「クラフトビール」からビールの楽しさを知った方の中には「リアルエールってなに?」という方もいる状況になってしまうのは、ある意味では当然のことと言えます。

・そもそも「リアルエール」ってなに?
「リアルエール」とは、大元を辿れば、イギリスの伝統的なパブで提供されているビールです。

通常は、ブルワリー(醸造所)で熟成まで行われて完全にできあがったビールを樽に詰めて提供します。

ところが、イギリスのビアパブではブルワリーから「未熟成」の樽ビールを購入します。それをパブの地下にある貯蔵庫(セラー)に保管し、ホップや清澄剤などを添加しながら、もっともおいしくなるタイミングまで自らの手で熟成させます。

このビール熟成を管理する責任者を「セラーマン」と言います。セラーマンはすべてのビール樽の熟成状況を把握しています。その樽が一番おいしくなったタイミングが来ると、地上のパブ店舗と繋がっているビールホースを樽に繋ぎます。地上の店舗は地下セラーの樽からビールを注がなければならないのですが、そのために「ハンドポンプ」と呼ばれるポンプで、井戸のようにビールを汲み上げるのです。

ハンドポンプ

「未熟成のビールをパブで熟成させる」ということは、ビール自体はできたての「生きた」(リアル)状態です。つまり、ビールを管理するセラーマンの熟成の技量がパブのビールの味に直結し、名店と呼ばれるビアパブには必ず優れたセラーマンがいます。そうしたパブで出されるビールのことを「リアルエール」と言います。

このリアルエールは当のイギリスでも1960年代には絶滅の危機に瀕しました。われわれがいつも「ビール」と呼び慣らすあの「ピルスナー」の台頭がイギリスにも起きたのです。軽快で爽快な味わいのビールが伝統的なエールを圧倒し、さらには自店で熟成させなければならない「セラーマン」の手間も逆に仇となってしまったのです。

伝統的なエールの消滅に危機感を持った若きジャーナリストたちが中心となり、リアルエールを守る団体「Campain for Real Ale」(CAMRA)が発足します。その精力的な活動の結果、リアルエールは無事に生き延びました。そうした成果から、CAMRAは「最も成功した消費者団体」とも言われます 。またCAMRAの成果や精神は、大西洋を越えてアメリカに渡り、現代の「クラフトビール」に多大な影響を与えたと言われています。

CAMRA の「本来の定義」で言