はじめに・ご挨拶
私は、建築士の団体である熊本県建築士会人吉支部において事務局およびヘリテージマネージャーの世話人をしております一級建築士の久保田貴紀と申します。ヘリテージマネージャーとは、地域に眠る古い建造物の保存や活用を図るために専門の講習を受けた建築士の集まりで、熊本県内で約100名、人吉支部で12名が登録され、日々活動しております。
このプロジェクトで実現したいこと
人吉市の大柿地区にある毘沙門堂(大柿毘沙門堂)は、近くの紅取橋や天狗橋とともにアニメ「夏目友人帳」の聖地巡礼スポットとして有名で、多くのファンが訪れていました。ところが、令和2年7月豪雨で球磨川沿岸にある大柿地区の集落のほとんどが被災し、毘沙門堂も被害を受けて建物が大きく傾きました。このままでは倒壊の危険がありますが、住宅再建が優先されるために集落では修復費用が捻出できず、解体せざるを得ない状況です。そこで、大柿地区の復興のシンボルとして毘沙門堂を復旧し、再び多くのファンに訪れてもらう事で地域の活性化に繋げたいと考えています。
私たちの地域のご紹介
熊本県南に位置する人吉球磨地域は、相良氏が鎌倉時代から明治維新まで700年という長きにわたって統治したため、国宝・青井阿蘇神社をはじめとする古い建造物・仏像などの文化財や、ウンスンカルタなどの遊び・風習などの民俗文化が数多く残り、熊本県内の文化財の8割が人吉球磨地域に集中していると言われています。平成27年にはこうした人吉球磨地域のストーリーが「相良700年が生んだ保守と進取の文化〜日本でもっとも豊かな隠れ里ー人吉球磨〜」として全国の17地域とともに「日本遺産」に選定されました。また、九州山地に囲まれた人吉盆地は土壌も肥沃で、11年連続水質日本一の川辺川を支流に持つ清流球磨川の水と豊かな土壌から穫れるお米から作られる球磨焼酎が特産品です。近年は、アニメ「夏目友人帳」の聖地巡礼でも有名で、令和3年4月には、一般社団法人人吉温泉観光協会が作品内で描かれる人吉球磨地域の風景をまとめた「人吉球磨アニメ通(ツー)リズムマップ」を作成し、観光振興による復興を目指しています。
プロジェクトを立ち上げた背景
人吉市役所から熊本県ヘリテージマネージャーの事務局へ相談があったことがきっかけでした。人吉市では被災した建物の公費解体が進んでいますが、公費解体の申込み期限までに毘沙門堂の修復費用の捻出策が提示できなければ解体止む無しという切羽詰まった状況で相談を受けました。相談を受けた際に、この毘沙門堂がアニメ「夏目友人帳」の聖地巡礼スポットになっている事に着目し、全国のファンに向けて聖地の保存のためにクラウドファンディングを募る事で修復費用が集められるのではないかと考えました。
これまでの活動
熊本県建築士会人吉支部では、平成23〜26年の「人吉球磨地域建築資源発掘事業」や平成27・28年の「熊本県近代和風建築総合調査」を通して、人吉球磨地域内の築50年以上の古い建造物のデータベース(670棟分)を構築しました。その経緯から、建築士が地域に貢献できることとして、日本遺産が評価された相良氏が統治した鎌倉時代から江戸時代に建てられた構成資産の寺社仏閣だけでなく、評価が確立されておらず解体の危機にある近代以降の未指定文化財についても保存活用を図り、歴史的な連続性と多様性のある「日本遺産・人吉球磨の価値を高める景観づくり・人づくり」を目標に掲げ、活動してきました。
資金の使い道・実施スケジュール
修復費用:3,003,000円(一部解体・