学びの機会を得ることが難しい子どもたち
日本では、経済的理由や家庭環境等によって、子どもが得られる学びの機会に大きな差が生じています。東京都の調査によると、経済的な理由で習い事を諦める子の割合は、一般家庭の子では1割程度ですが、貧困層にある家庭の子だと約6割も存在しています(図1)。また、東京都の一般家庭の子は約6割が大学等に進学しているのに対し、生活保護世帯や児童養護施設で暮らす子は約4割ほどしか進学していません。(図2)。
さらに、貧困層にある家庭の子どもたちは、様々な生活場面で周りの子が当たり前のようにしていることができない現実を日々受けとめながら日常を送っています。Kacotamが関わるそのような子どもたちの中には、最初から「どうせ自分にはできない」と諦めてしまったり、ただ「〇〇したい」と望むようなことさえも難しくなっている子どもがいます。
学びの機会は、すべての子どもに平等にあるべきものですが、経済的理由や家庭環境等により、十分な学びの機会が得られない子どもがいます。生活環境に左右されずに、教科学習や体験学習などの様々な学びの機会を子どもが得られる環境を整えていくことが必要です。
図1 東京都内における経済的理由で習い事を諦めている割合(中学2年生)
(出所:東京都子供の生活実態調査報告書)
図2 東京都内における大学等の進学率
(出所:東京の子供と生活の状況)
Kacotamの取り組み
私たちは、「すべての子どもが学びの機会に出会い、自己実現に向けて挑戦できる社会」を目指して、北海道札幌市近郊で、学びの場や居場所をつくっています。活動を始めた頃は、現理事長の髙橋が、ひとりで児童養護施設を訪問して活動をしていました。それから少しずつ、一緒に活動するボランティアメンバーや応援してくれる存在が増えていき、活動拠点を増やすことができました。今では、100名を超えるボランティアメンバーとともに、23ヶ所で活動をしています。設立から約9年間で、延べ12,000人以上の子どもが、Kacotamの学びの場を利用しました。
私たちの学習支援は教科学習のサポートをするだけではありません。目の前の課題を解決しながら、子どもの好き・興味や「やりたい」ことを見つけ、それをカタチにしていくことに意味があると考えています。
Kacotamでは、学習支援の中での会話から生まれた子どもの疑問や「やりたい」をきっかけに、さまざまな「カタチ化企画」を実施してきました。「文房具の『ジェットストリーム』はなぜ書きやすいのか」という子どもの疑問をきっかけに、製造メーカーの事務所を訪問して開発秘話を聞きに行ったり、将来パン屋になりたいという子と一緒に様々な菓子パンを作る企画を実施したりしました。
三菱鉛筆北海道販売㈱に訪問
他にも、興味のある職業に就いている人に話を聞きに行く「お仕事カコタム」や、ボランティアメンバーの好き・興味を伝えるミニ講演会「カコタイム」等の子どもが視野を広げたり、自分の将来を考えるきっかけになるようなイベントも実施しています。
お仕事カコタム「ウエディングドレスのデザイナー」
(利用する家庭からの声)
「ずっとわからなかったものがわかった喜びを興奮して報告する子どもの姿を見ていると、初めての体験を言葉にならない言葉で、一生懸命伝える姿を思い出しました。親としてその姿にもう一度会えたことがとても嬉しく思いました。」(中学生 母親)
「カコタムは、勉強を教えてもらえる場所というのはもちろんですが、やりたいことをできるというか、自分の空間がある場所。学校生活で味わえないことができます。」(高校生)
札幌から東京、そして新たな地域を目指して
北海道札幌市を中心に活動を始めて、まもなく10年目を迎えます。応援してくださる皆さまのおかげで、札幌以外でも活動範囲を広げ、より多くの子どもたちとつながることができています。しかし、今もなお日本には繋がりを必要としている子どもがたくさんいます。
この度、私たちはKacotamが目指す「すべての子どもが学びの機会に出会い、自己実現に向けて挑戦できる社会」に向けてさらなる一歩を踏み出すべく、道外への進出を決めました。熱い想いを持ちながら、進学や就職で北海道を離れていったメンバーの力を借りて、北海道から東京へ活動を広げます。地域に関わらず、すべての子どもたちが学びの機会に出会えるように。その第一歩を東京から踏み出します。
東京での活動内容
東京での活動開始にあたり、学校や社会に馴染めない若者へ社会参画の機会を提供している、NPO法人サンカクシャと一緒に学びの場を作っていきます。
主に、ひとり親家庭や家庭環境等により塾の利用が難しい小学1年生~18歳までの