はじめに
「ビールの魂」と言われ、ビールの味わい、風味づくりに欠かせない原料ホップという植物をご存知ですか?
クラフトビールがブームから食文化として広がりつつある昨今ですが、実はホップの国内自給率は1%未満と言われ、日本のホップ農家は減少の一途をたどっています。
ホップは世界に200種類以上の品種があると言われ、香りや苦味は多様性に富み、どんなホップを使用するか(もちろん麦や醸造方法も多種多様!)によって、ビールの味わいは全く異なるものになります。多様なホップをはじめとした原料、醸造方法を駆使して個性的なクラフトビールが今日も世界中で生まれています。
海外のクラフトビールシーンでは、自分たちの地域で生産されるホップや麦で醸造されたビールを、自分たちのまちのビールとして日常的に楽しむ、地産地消の文化が定着しています。
そんな夢を描いて、全員非農家出身ながら日本有数のホップ産地秋田県横手市でホップ農家として新規就農、誕生したのが、次世代ホップ農家集団「あきたホップチャレンジャーズ」です。
プロジェクト概要
<消滅の危機に瀕するホップ産地>
私たちの住む秋田県横手市は、50年前から本格的なホップ栽培が始まり、最近もホップ生産量日本一となるなど日本有数のホップ産地です。(※2017年度市町村別ホップ生産量第1位)
ホップはもともと寒冷地の植物で、生産量の9割以上は東北に集中していますが、秋田県南は日本最大の広さを誇る横手盆地の奥羽山脈をはじめ山に囲まれた豊かな土地で、ホップ栽培に最適な条件が揃っています。
一年を通しては冷涼な気候であるにもかかわらず、夏の日照時間が長く、日中と夜の寒暖差が大きいこと。そして雪です。横手といえば「かまくら」で有名な町ですが、冬の間降り積もる雪がホップの株を冷害から守ってくれます。山にしみこんだ雪は一年を通して途切れることなくミネラル豊富な水を横手盆地に提供してくれます。
もう一つ、50年の歴史的な積み重ねが育んできた栽培技術です。半世紀前、先人たちが始めたホップ栽培は、当初栽培方法も手探りで、風害や病害虫など苦難の連続だったと聞きます。
今でもその手間の多さや、自然との知恵比べは変わらずに続いていますが、私たちが師匠と呼んでいる匠の農家たちの技術は今もなお進化しており、秋田産ホップの面積当たりの収穫量は、過去最高を更新し続けています。
一方で現在の秋田のホップ農家の平均年齢は約70歳、農家の件数はピーク時の130軒から20数軒と1/5にまで激減しています。
<見えてきた課題>
ではなぜ、日本のホップ農家は消滅の危機に瀕しているのか?課題も見えてきました。
そのひとつが「自分たちの作ったホップが、どのようにビールに使われているのか農家は知らない」ということです。
例えば現在、秋田県で生産されるホップは、99%大手ビールメーカー指定の品種のみを栽培しています。もちろんそれらは美味しいビールに加工されて市場に流通するわけですが、大手の膨大な量のビール製造に占める日本産ホップの割合はわずかで、なかなかその土地ならではのホップの味わいや個性というものは生まれにくい現状があります。
私たちは多種多様なホップ品種の栽培し、醸造家との品種、品質に関するやり取りや、飲み手の感想が聞ける場を創出します。ホップ農家としてのやりがいがアップするのはもちろんのこと、ホップやクラフトビール市場が活性化し、より栽培の工夫による品質の向上、技術や生産性の向上を進めたいと考えています。
ホップの可能性をもっともっ