はじめまして!
島根県の離島・隠岐の島町に本社を構える「合同会社サイハテ」代表兼CEOの野一と申します。
突然ですが、皆さんはインドアとアウトドア、どちらが好きでしょうか。
私は世にも珍しい、アウトドア寄りインドア派を自称しております。
どういうことかと申しますと、私はデジタル・アナログ問わずゲームが大好きで、それと同じぐらい田舎巡りも大好きです。
日本各地を巡り、登山をしては山頂の休憩所でゲーム開発をしたり、田舎を訪れては古民家カフェでシナリオを描いたり、離島に渡っては船の中でドット絵を打ったりしていました。
そんなことをしているうちに、「田舎でゲーム産業に携わりながら、その地域のために何か出来ないだろうか」……そんなことを考えるようになりました。
西郷岬灯台にて
さて、離島を含む「田舎」では、どこの自治体も大体同じような問題を抱えています。
少子高齢化、地元産業の後継者不足、空き家問題、人口減に伴う公共サービスの悪化……etc.
そして多くの自治体では“若者の移住を促進する”ことでこれらの問題を一挙に解決しようと考え、四苦八苦しながら様々な施策を打っていることでしょう。
その戦略は決して間違ってはいません。
しかし残念なことに、“若者が減少し続ける田舎には、 若者の目を引くためのノウハウが無い”という致命的な課題があるのです。
そういった地域課題と、私の「アウトドア寄りインドア派」として培った知識は抜群に相性が良く、これまでこの島で様々なエンターテイメント事業を立ち上げてきました(詳細は後述)。
そして、この地域にエンターテイメントを根付かせ、さらに私自身もこの島に根付くために計画したのが「国境離島初のボードゲームカフェ『Cachette』(カシェット)」だったのです。
①【娯楽】の創出
隠岐の島町は人口14,000人弱と、日本の離島としては小~中規模の部類にあたります。
この数字をご覧になった方は「なんだ、意外と人がいる島じゃないか」と思う方がおられるかもしれません。
……しかし、一方で生産人口(15歳~39歳人口)は2,500人弱程度であり、少子高齢化の影響を考えればその数はこれからどんどん減少していくと予想されます。
そんな状況ですから、島からは当然娯楽施設が次々と撤退していき、若者たちに残された娯楽は公園かデジタルゲームか釣りに行くか……といったところです。
小学生ならまだしも、中学生以上の若者が果たして積極的に公園で遊ぶでしょうか。
釣りに興味が無い島外の若者が、果たして娯楽の無いこの島に興味を持ってくれるでしょうか。
『コヨーテ 』を遊ぶ3人(サンテラス2Fホールにて)
そういった環境に不満を覚えた若者たちは、当然島から出ていくでしょう。
そして、不満を覚えて島から出ていった若者たちは、ほとんど島には戻ってきません。
より多くの若者に、島に愛着を持ってもらうため。
より多くの若者に、島に興味を持ってもらうため。
この島には今、娯楽こそが必要不可欠なのです。
②観光の創出
皆さまは隠岐の観光事情をご存じでしょうか。
我らが隠岐の島町は島まるごとが“世界ジオパーク”に認定されており、高山植物が海のすぐそばに生えていたり、その辺の岩壁が地質学的に大変貴重な岩石だったりする離島ならではの特殊な環境で、島固有の動植物も多く生息しています。
また、隠岐の島町は釣りの名所としても広く知られておりまして、そのほかにもキャンプやマリンスポーツ、ハイキングなどに向いたスポットがたくさんあり、毎年多くの観光客で賑わっております。
――そう、夏の晴れているときだけは。
隠岐は日本海に浮かぶ離島という特性ゆえか、非常に天候が崩れやすい地域です。
冬は1日中晴れている日など1ヶ月に1回あるかどうかというぐらいで、海も荒れやすいため流通の要であるフェリーが出ない日さえあります。
また、絶好の観光シーズンであるはずの夏も、梅雨や台風の影響であいにく雨が降ってしまうことがあります。
雨天時の観光施設として入りやすい施設は島に1~2件しかなく、観光地の“ついで”に入るならまだしも、ここのみの観光を目的として離島に来るお客様というのはまず想定できません。
しかし、そこに国境離島唯一のボードゲームカフェという選択肢があったらどうでしょう。
観光資源をアウトドアに依存していた離島ではこれまで考えられなかった、全く新しい観光の形が誕生すると思いませんか。
当店ではボードゲームの店外への持ち出しサービスも行う予定ですので、例えば……
亀の原水鳥公園でアヒルの餌やり(無料)を楽しみつつ……
湖のほとりでボードゲームを楽しんだり……!
他にも、
・家族や友人と離島を訪れ、そこそこの観光を楽しんだら夜はホテルでボードゲーム三昧……!
・気の合った島民とボードゲームカフェで交流して、そのまま地元の飲み屋へ……!
そんな需要が生まれる可能性もあります。
季節や天候といった不安定なものに依存せざるを得なかった観光客の選択肢をなるべく増やしてあげること――これが島の観光を促進し、リピーターを増やしていく一助になるのではないかと私は思います。
隠岐の島町(おきのしまちょう)は、島根県の島根半島より北に約80kmの海上にある離島です。
実は、ここは日本で唯一の「名前の無い島」であり、他の有人離島のように「〇〇島」という名称を持ちません。
地域住民等からは通称「島後(どうご)」、公的には隠岐の島町と呼ばれています。
隠岐は古来より皇族や貴族が流刑にされてきた“島流しの聖地”としての歴史を持ち、そこから都の文化がもたらされ、また彼らをもてなすために始まった行事が今も伝統として残っています。
隠岐国(当時)に流刑となった
後醍醐天皇(画像はWikipediaより)
また、民主主義の始まりとなった1871年のパリ・コミューンより遡ること3年前、隠岐の島の人々が当時管轄だった松江藩の役人を追い出し、世界初の人民政府が誕生したことは日本史通の間ではよく知られています。
私は「離島にこそエンターテイメントが必要だ」と信じ、これまで数々の「ゲーム×地域振興」事業に取り組んで参りました。
代表的な取り組みを挙げるならば、
・東方Projectと島の酒造会社とのコラボ日本酒「東方隠岐誉」の企画・開発
です。
そもそも島ではゲーム産業そのものに前例があまりなく、地元の方に「東方とコラボするんですよ」と言うと「東方神起?」と聞き返されるなど、当初は誰もが事業に懐疑的な見方をしておりました。
……ところが蓋を開けてみれば、隠岐の島町の舟幽霊「ムラサ」に由来すると言われるキャラクター「村紗水蜜」がパッケージに描かれたそのお酒は平日の昼間にも関わらずわずか4分で完売御礼。
その“事件”を受けて、島の方々のゲーム産業に対する見方が変わりつつあるという段階です。
「東方隠岐誉」事業に関してのインタビュー記事はこちら↓
「公務員として隠岐の島町のことを考えたとき、村紗をソロで起用するのが一番“粋”だと直感した」 東方Project×隠岐の島町コラボ担当者、野一さんイ