まうこうした教育的原理を、GAKUは、公共教育のちょっと外側で実現しているように見て取れます。そして今回、いわゆる若手ながらすでに国際的な活躍を展開している劇作家・演出家である山本卓卓が、「新しい演劇のつくり方」なる授業を展開するそうです。これは山本にとっても、チャレンジになると思います。なぜなら、参加者は必ずしも演劇を信じていないからです。というか、演劇なんか信じていないほうが、ふつうなんですから、そういう10代を相手に、どんな演劇の授業ができるのか、そここそが問われることになるでしょう。ゼロベースで出会ってこそ、前に進めるかどうかが課題となり、それこそが「新しい演劇のつくり方」ということになるのです。ちょっと怖いけど、見てみたい?そんな期待を抱いています。」
内野 儀(うちの・ただし)
1957年京都生れ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了(米文学)。博士(学術)。岡山大学講師、明治大学助教授、東京大学教授を経て、2017年4月より学習院女子大学教授。専門は表象文化論(日米現代演劇)。著書に『メロドラマの逆襲』(1996)、『メロドラマからパフォーマンスへ』(2001)、『Crucible Bodies』 (2009)。『「J演劇」の場所』(2016)。公益財団法人セゾン文化財団評議員、公益財団法人神奈川芸術文化財団理事、福岡アジア文化賞選考委員(芸術・文化賞)、ZUNI Icosahedron Artistic Advisory Committee委員(香港)。日本アメリカ文学会編集委員、「TDR」誌編集協力委員。
岡田利規さまより
©宇壽山貴久子
「自分が現に置かれているこの状況だけが存在する、それ以外は存在しない、……もしも本当にそうだとしたら、どうにかなってしまいそうです。
でも、世界には、オルタナティヴなものが存在します。それは不可欠です。
芸術は、そしてその一形式である演劇は、本来的に、オルタナティヴを現出させることができます。そのことに長けています。
そして、山本卓卓くんという演劇の作り手は、そのことをよくわかっている人だと思います。彼はそこに賭けて演劇をやっている人だとぼくは思います。
声を大にして言いたいのは、世界と自分とのあいだに違和を感じるときに、支配的な価値観のほうに飲み込まれなければならないなんてことは断じてない、ということです。」
岡田利規(おかだ・としき)
1973年横浜生まれ、熊本在住。演劇作家、小説家、チェルフィッチュ主宰。活動は従来の演劇の概念を覆すとみなされ国内外で注目される。『三月の5日間』で第49回岸田國士戯曲賞受賞。小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』で第2回大江健三郎賞受賞。16年よりミュンヘン・カンマーシュピーレのレパートリー作品演出を4シーズンにわたって務め、20年『The Vacuum Cleaner』がドイツの演劇祭Theatertreffenの“注目すべき10作品”に選出。『プラータナー:憑依のポートレート』で第27回読売演劇大賞 選考委員特別賞受賞。21年戯曲集『未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀』で第72回読売文学賞 戯曲・シナリオ賞受賞。
杉田聖司(GAKU事務局)より
「GAKU事務局スタッフの杉田です。GAKUにインターンとして勤務していた学生時代から「範宙遊泳」を観劇していた私は、『どんな人もそれぞれは間違いなくそれぞれの物語の主人公。だから群像劇をつくっている。群像劇じゃなきゃダメなんだ。』という山本さんの言葉に心を動かされてきました。進